ドライビングポジションの調整は重要なセッティング
モータースポーツがスポーツである以上、もっとも大事なことは身体の使い方。その要となるのがドライビングポジションだ。F1などのレーシングカーは、新しいマシンができたときに、何時間もかけてそのドライバー専用のシートを作る。シートは体内座標を確定させるものであり、ドライバーとクルマのインターフェースを司る部分になるからだ。ドライビングポジションがでたらめでは、正確な操作は決してできない。
そういう意味でもドライビングポジションは“最重要のセッティング”といっていいだろう。正しいドライビングポジションの決め方は以下の通りだ。
まずはシートに奥深く座る
強いGがかかっても身体がぶれたりしないように、ホールド性を高めたり、クルマの挙動を感じやすくするためにも、腰、背中、肩はシートと隙間が出来ないようにし、接触面積を増やしておきたい。そのためにはシートに奥深く座り、仙骨付近や腰回りが離れないようにするのが肝要。これが意外にできていないので、定期的に点検することを習慣にしよう。
シートバックを立てる
人間のGセンサーで一番重要なのは、26個の背骨。背骨は真っ直ぐに立てたときに、Gセンサーの感度がよくなるので、シートバックはできるだけ立てておく。コーナリング中も首を傾けたりせず、左右の目はつねに水平になるようにして、目線を安定させることがコツだ。
フル加速時に首が反りそうならシートバックが寝過ぎている証で、フルブレーキで上半身が前のめりになりそうなら、シートバックが立ちすぎかもしれない。
ステアリングと腕・肩の位置を決める
次はステアリングと手の関係。チルト機能があれば、ペダル操作に悪影響が出ないところまで、ステアリングの位置は低くして、肩をシートにつけたまま手を伸ばして、手首がステアリングのトップに乗るまで座面を前に出す。
大事なことは、ステアリングをどこまで切っても、肩がシートバックから離れないこと。基本の9時15分の位置から切り始め、右手が9時、8時になっても肩が離れない。左手が3時、4時の位置になってもシートから肩が離れなければOK。
ずいぶんステアリングまでの位置が近いと思うかもしれないが、これが力まず自由に腕を動かすためのポジション。腕が伸びきってステアリングが遠いと、無駄な力が必要になる。テレスコピックも十分使うといい。
座面は下げておくとメリットが多い
シートリフターがあれば、座面はできるだけ下げておきたい。座面が低いと自然に目線が遠くなり、頭部が車体のロールセンターに近づくので、ロールの影響を受けにくくなる。
可能であれば、お尻側の座面はできるだけ下げて、腿の膝に近い部分は少し高くなるようにしておくと、減速Gがかかったときの身体のホールドが楽になる。
下半身は膝が伸びきっていないかをチェック
ここまで決めれば、下半身も自ずといいポジションになっているはずだが、一応確認でフルブレーキを踏んだとき、クラッチをしっかり切ったときに、膝が伸びきっていないかをチェック。もちろん目一杯奥深く腰掛けた状態で、腰裏に隙間がないのが前提。このペダルまでの位置が遠いと、腰痛の原因になる。
ドライビングポジションを決める目的は、手足をしなやかに自由に動かすこと。身体をしっかりホールドしてクルマを感じやすく操作しやすいポジションを得るのが何より重要。
ストリートでも1時間や2時間のドライブで、肩・腰・首がいたくなったり、疲れたりするのは、どこかポジションに無理がある証拠で、もう一度ドライビングポジションを見直してみた方がいいだろう。
また体調や服装、ドライビングスキルの上達によっても、ベストなドライビングポジションは変わってくるので、微調整はつねに必要。チルト、テレスコピック、シートリフターなど使えるものは何でも使って、真のペストポジションを探求しよう。
繰り返しになるが、ドライビングポジションの調整は、重要なセッティングなのだ。