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「オラ系」ミニバンの元祖は「エルグランド」! トヨタを本気にさせた偉大なる足跡とは

走りと豪華さでミニバンブームを牽引

 日本国内では1800mm以上の全高にスライドシートを備えたミニバンが、かれこれ20年以上もファミリーカーの定番となっている。もはや子育て世代には無くてはならない存在となっているミニバンというジャンルだが、その形成に大きな影響を与えたクルマが日産エルグランドだった。1997年の初代登場から現在までの変遷をたどってみたい。

徐々に盛り上がっていったミニバン市場

 振り返れば1990年代に端を発するミニバンの歴史だが、その先駆者となったのは1990年にデビューしたトヨタ・エスティマだった。それまで、広い室内空間を持つパッセンジャカーといえば、商業車から派生したワンボックスワゴンしか存在しなかったが、乗用車感覚の運転が可能、そして広い室内空間を持つ新形態の車型としてエスティマが登場。

 エスティマは3ナンバー規格の車体を持ち、エンジンも2.4リッターと上級志向のモデルだったため、そのコンセプトは認められながらもなかなか手が届かず、大きなヒット作とはならなかった。しかし、世の中に新形態のファミリカーとしてミニバンの存在を印象付ける大きな役割は果たしていた。

 このエスティマを追いかけたのが1994年登場のホンダ・オデッセイだった。やはり3ナンバー規格の車体と2.2リッターエンジンを持ち、上級ミニバンとして市場の支持を集めることに成功。もっとも、ミニバン市場の動向は、5ナンバー枠のエスティマ・エミーナ/ルシーダ、日産バネットセレナ、ホンダ・ステップワゴンが主力で、この時点で上級志向のユーザーニーズに応えるミニバンは存在しなかった。

破格の手法で登場した初代エルグランド

 こうした状況で1997年に登場したのが日産エルグランドだった。押し出しの利いた3ナンバーボディ(全長4740〜4775mm、全幅1775〜1800mm、全高1940〜1955mm)に3.3リッターV6のVG33型エンジン(170ps)を組み合わせ、それまでのミニバンにはなかった圧倒的な動力性能を実現。

 2リッター級・直4エンジンの組み合わせが常識だったこのサイズのワゴンに、2クラス上の3リッター級・V6エンジンを搭載する破格の手法は、じつは日産には前科(?)があった。ワンボックスワゴンのキャラバン(E24系)に1988年、3リッターV6のVG30を搭載する「GT」シリーズを追加。格違いの動力性能でライバル勢を圧倒し、キャラバンをワンボックスワゴンの頂点に導く過去があったのだ。

 エルグランドは、パッセンジャーの満足感を引き上げる上級志向の改良も実施。2000年に登場した7人乗りの「Xリミテッド」では、2列目シートを独立した2座方式のキャプテンシートとすることで、航空機のファーストクラスを彷彿とさせるくつろぎ感、もてなし感を演出。さらに、エンジンを3.5リッター4バルブDOHCのVQ35型に変更したことで出力は一気に240psへと高められ、そのゴージャスな仕様と相まって、文字どおり上級高速クルーザーとして群を抜く存在となっていた。

熟成とともに2代目、3代目へと進化

 以後エルグランドは、2世代目のE51型(2002〜2010年)で細部を熟成化(リアサスペンションを独立式のマルチリンク方式化、リアブレーキをディスク化など)。

 そして3世代目のE52型(2010年〜現在)ではFFプラットフォームを採用し、低床化や室内空間の拡大を図るなど、最上級ミニバンとて要求される性能、質感の向上を果たすモデルとて進化を遂げてきた。

 逆に、エルグランドをターゲットモデルと見なしたトヨタは、2002年にアルファードを発表する。上質さや洗練度に狙いを置いた車両で、2008年に登場した2代目では力強さや先進度を謳う兄弟車ヴェルファイアを追加。

 3.5リッターV6 DOHCのほかに、現行トヨタの根幹コンセプトであるハイブリッド仕様を併立させる商品ラインナップで対抗した。

 きめ細やかで上質かつ高性能。日本人ユーザーが求める高級車像をうまく具現化したミニバンとして、エルグランドは日本のモータリゼーション史に残る一台として大きな足跡を残してきた。

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