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低すぎて「着地」の衝撃! どシャコタン「ジムニー」はまさかの「ラパン」だった

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TEXT: 賀川 真弥(KAGAWA Shinya)  PHOTO: K-STYLE編集部

学生たちにとってオートサロンは一世一代の檜舞台

 今年は開催されなかった東京オートサロン2021(バーチャルでは開催中)。自動車アフターパーツ業界の「新年1発目の新作お披露目の場」として、またそれらを見ようと、国内だけでなく世界中からギャラリーが集まる一大イベントとして定着している。

 そのオートサロンだが、自動車業界で働こうと勉強している学生たちにとっては「卒業前の自分たちの作品を披露する場」だったりもする。今回紹介する日本自動車大学校(以下NATS)も同様で、毎年各学生たちが仕上げた作品を披露し、赤のネクタイを巻いて正装した多くの学生たちが自分達の愛車を熱心にギャラリーにプレゼン、多くのアワードに輝いている。そこで今回はそんな彼らが2020年のオートサロンで展示していた作品群から、ジムニー顔の不思議なクルマをご紹介していく。

驚愕のシャコタンジムニーと思いきや、ベースは同じスズキの軽だった

 ショーネームは「NATSイージーキャンパー」。一見するとスズキ・ジムニーの「どシャコタン」仕様だが、なんとベース車は同じくスズキのラパンSS。そこへ現行ジムニー(正確にはシエラ)の顔面(ライトとグリル)を移植し、オフロードテイストにカスタマイズしている。

 手掛けたのNATSのカスタマイズ科5班の学生たち。NATSでは毎年、東京オートサロンに向けて車両を製作・出展し、その後車検に通すまでが、いわゆる卒業製作課題となっている。その予算は車両代を含め100万円以内。そんな事情もあり、格安で入手したラパンSSをベースにしたそうだ。

 この仕様に至った背景は、さらに遡ること2019年のオートサロンに展示した、ハイリフト仕様の「NATS ジムニーアドベンチャー」にある。

「プロジェクト当初はラパンのボディ形状を考えて、C10顔やピックアップ加工をして……まで考えましたが、途中から方向転換。前年に先輩方が作った“ジムニーアドベンチャー”に対抗して、今年はサゲのジムニーを作り、2台を並べて展示をしたら面白いんじゃないか、ってなったんです」(5班リーダー談)。

 そのローダウンも破天荒な落ちっぷり。「先輩は18インチ(!)アゲたんだから、コッチはスラムドまで持っていくのがゴールだろう、となりました(笑)」。気になるその足まわりだが、ベースはエアフォース製のエアサス。ラパン用の設定はなかったのでイチから作って貰い、ストラット形状のままでもベッタリ落ちるようワンオフ。それに加えてボディ側も「チャネリング加工」して着地まで到達した。

ボディはピックアップ化して開閉式シェルを搭載

 各学生たちが作り上げたカスタムパーツも非常にユニーク。初期型ラパンの形状に合わせるため、グリルと接地するフェンダー「付け根」部分はシエラ用のそれを使用しながら、ラパン従来のフェンダーとニコイチ。オーバーフェンダーもシエラ用だが、車体のバランスに合わせて短縮しつつ、ラパンのフェンダーアーチに合わせて再成形。ホイールはクリムソンの「ディーン・クロスカントリー」15インチを合わせた。

 そのフェンダーに合わせたフロントバンパーは先輩の作品「ジムニーアドベンチャー」のそれにデザインを寄せつつ、アルミ板を使ってワンオフ。バンパー製作よりもウインチが先に納品されたこともあり、ウインチありきの一体感のある意匠で製作。リップに該当するシルバーのアルミパイプは「ラパンのフレームが見えてしまうので、それを隠すために作りました」。

 ジムニーらしいオフロード感をはドアで演出。窓を取っ払い再成形し、ハーフドア仕様に。サイドステップは、シエラのそれをベースに、ラパンのサイズに合わせて作り直し。この辺りは授業で習った技術が十二分に発揮されていることだろう。

 ピックアップに見せるべくボディをカット。そこへアルミ板とアクリル板を使ったシェルをワンオフ。ボディが歪まないようカットする前にBピラー同士の補強(溶接)、骨組みも斜めに補強するなどした後に屋根を切り、剛性確保もしっかり。「ハイエース用の電動のリヤゲートシリンダーを使って上げ下げできるよう検討したが、思いのほか配線類が多く断念しました」。

 キャビン上にはパイプベンダーを使って作ったアルミ製ルーフキャリアを追加。タイヤを載せても問題ナシの精度を実現。ちなみに前後バンパーのパイプも同様の方法で作っている。リアのチューブバンパーの先に付けたヒッチメンバーは&カーゴCURT。車体に寄せるよう穴の位置を奥に移動して装着。そのカーゴに排気ガスが直接かからないよう、マフラーを左右に曲げ加工。テールランプはジムニー用の社外LEDを装着。

 エンジンルームはコアサポートの位置を変えているため、ストラットタワーバーをアレンジしたワンオフバー補強もバッチリ。「校舎に転がっていたバーなども流用しています(笑)」。さらにボディを着地させるために5センチほど底上げ。

 室内はSSらしさの名残りでスポーティな構成。ステアリングはスパルコ、ステアリングボスはチルトアップ式を選択。ロールケージは外周に使用しているパイプフレームと同素材し、シートは先輩から譲ってもらったというブリッドを装着。インパネ類は半ツヤでペイントしてスパルタンな雰囲気を盛り上げている。

 車両製作に携わった「カスタマイズ科5班」の学生たちに仕上がりの感想を聞くと「クルマが大好きなのに切り刻んでいいのか躊躇いましたけど、切るにつれ慣れちゃいました(笑)」や「シェル作りに苦労したけど、自分たちの思った形にできてよかった」など、思いもひとしおな模様。そして何より「メンバーと一緒に作業できて楽しかった」。恐らく苦労が多かったと思うが、最高の卒業制作になったことだろう。

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