マークXシリーズで唯一の3ペダルMTを備える
トヨタのミドルクラスセダンであったマークXは、その実質的な先代モデルと言えるマークIIの時代から数えて50年以上の歴史を持つ由緒正しいモデルであった。しかし、残念ながら2019年いっぱいで生産を終了し、初代マークII(当時はトヨペット コロナマークII名義)から続いた51年の歴史に幕を下ろしてしまっている。
そんなマークIIはトヨタの屋台骨を支えたミドルクラスセダンというキャラクターの他に、スポーティセダンというキャラクターも持ち合わせていた。
4代目モデルからはその名も「GT」というスポーツグレードが存在し、5代目と6代目ではツインターボエンジンを搭載した「GTツインターボ」、7代目と8代目では「ツアラーV」、マークIIとしては最終型となる9代目では「iR-V」とハイパフォーマンスなエンジンを搭載したモデルが脈々と受け継がれてきたのである。
しかし、マークXと名前が変わったモデルでは3ペダルMTはラインナップから落とされ、自らクラッチペダルを踏み込んで変速を楽しみたいユーザーは落胆することとなる。
その後2009年にマークXは2代目へとフルモデルチェンジを果たすが、引き続き3ペダルMTは存在せず、もはやこのクラスの国産セダンで3ペダルMTは夢のまた夢と思われていたが、2014年12月に突如発表されたスポーツコンバージョンモデルが「GRMN」だった。
もともと2代目マークXには「G’s」と名付けられたスポーツコンバージョングレードが存在しており、専用エアロや専用サスペンション、そしてボディ補強まで手が加えられたものだったのだが、こちらはパワートレインに関してはベース車のままとなっていた。
しかしGRMNでは、エンジンのECUプログラムを最適化して3PSの出力向上(321PS)を果たし、カーボンルーフなどを採用して車両重量の低減と運動性能の向上を実現。そして、何よりカタログモデルと異なる点が、専用となる6速MTが搭載されている点だった。
当然ながらMT仕様の設定が存在しないマークXであるから、ペダル配置はもちろんセンターコンソール部などもGRMN専用に設計されており、足踏み式だったサイドブレーキも手引き式に変更。スポーツシートや小径ステアリングなど、走りにまつわる多くの部分が変更を受けていた。
当時は100台限定で540万円と決して安くはない価格であったが瞬く間に完売となり、潜在的な需要の高さを感じさせてくれたのである。