視界を向上させ事故リスクを減らすスバルの安全思想
当たり前のことだが、クルマには必ず見通せない「死角」がある。ここに人やクルマが入っていると気付くことは困難となり、事故リスクが高まっていく。これは人にとって見えないものに対して危険を感じることはできないからで、裏返せばこの死角をなくすか、あるいは減らすようにドライバーが努力することで事故のリスクは減っていくことになる。そんな中で「0次安全」として基本構造からドライバーの死角を減らし、それに先進技術を加えることで視界向上を図ったことで高い評価を得ている新型レヴォーグについて解説したい。
“360度センシング”の実現
新型レヴォーグがこだわったのは、人間が及ばない部分をサポートすることで事故リスクを小さくすることだ。その核となるのが言うまでもなく「アイサイト」である。この言わば人間の眼に相当するセンシングによって、認識し、制御するのが基本だ。
新型レヴォーグではそのセンサーの画素数を従来から倍増させ、同時に捉えられる範囲も2倍に広げた。さらに前方左右と後方左右にはマイクロ波レーダーも組み合わせ、これによって新型レヴォーグでは360度センシングを実現しているのだ。この背景にはソフトウェアも処理能力を高めるだけでなく、電動ブレーキブースターの採用も大きく貢献している。
デザイン性と安全性の両立
この先進装備の前に新型レヴォーグで追求されたのが“0次安全”のひとつ、乗員の安全性を保つキャビンの高剛性化だ。前後にクラッシャブルゾーンを設けて衝撃を吸収し、高剛性化したキャビンによって乗員の安全性を確保するというもの。ただ、この剛性は闇雲に高めれば良いというものではなく、周囲を見通せる視界を確保しながら乗員を護れるキャビンが重要なのだ。特に視界を確保する上でポイントとなるのがAピラーの形状。ひと頃は剛性を高めるために太くなる一方だったが、最近は視界と剛性の両方に配慮した設計がさなれるようになってきた。
新型レヴォーグもそうした配慮をしたクルマのひとつだ。スポーティな外観を実現しながら、ドアミラー位置やピラー形状を最適化することで死角そのものを全方位で低減させ、そもそもの事故低減に貢献している。新型レヴォーグはその“0次安全”を実現した上で、先進技術「アイサイトセーフティプラス」や「アイサイトX」をグレード別に搭載。セーフティプラスは大きく運転支援テクノロジーと視界拡張テクノロジーの2つに分けられ、さらなる高度な運転支援にアイサイトXが機能するという構成によって総合的な安全性を高めているのだ。
死角部分をセンサーで対応
たとえばアイサイトセーフティプラスに含まれる「スバルリヤビークルディテクション(後側方警戒支援機能)」は全グレードに搭載した。この機能はリアバンパーのサイドに埋め込まれたレーダーによって自車斜め後方の車両を検知し、ドアミラーのLEDランプが点灯、もしくは点滅させてドライバーに注意を促す。さらに、前向き駐車をして後退する際に後方の左右から近づいて来る車両を検知してLEDランプを点滅させ、警報音を鳴らして警告する。つまり、ドライバーにとって死角となりやすい斜め後方をセンシングさせてアシストさせているのだ。
なかでもアイサイトセーフティプラスで注目されているのが、GT EX、GT-H EX、STI Sport EXに視界拡張テクノロジーとして搭載された「前側方警戒アシスト」だ。前方左右のフェンダー部にマイクロ波レーダーを搭載し、前方左右から近づいてくる車両を検知して、警告しつつも、それでも停止しない場合は強制的にブレーキかけて停止させる。しかも、この時はわずかなラグも命取りになるという判断から、ガソリン車では搭載例が少ない電動ブレーキを組み合わせて制御させていることも、確実に停止させるというこだわりから採用されたという。