来春以降に実戦参加を予定した開発
今年のオートサロンで、ホンダアクセスが、e-DRAG(イードラッグ)を発表した。これは、昨年ホンダが発売した電気自動車(EV)のホンダeを基に、1/4マイル(約402.33m)の直線を加速し、その時間を競うドラッグスター仕立てにした参考出品車だ。
ホンダアクセスは、ホンダ車の純正アクセサリーの開発と販売を行う会社であり、過去のオートサロンではクルマ生活に関する提案を行ってきた。しかし今回は、よりオートサロンの趣旨にそう形でスポーツに的を絞り、「オモシロイ」を表現する題材としてe-DRAGと、K-CLIMB(ケイクライム)の2台を発表した。
ことにe-DRAGは、EVが単に環境車というだけでなく、ホンダeが後輪駆動であることや、モーターのトルク特性がエンジンと異なり低速側で非常に大きく、優れた瞬発力を持つことなどを活かし、加速性能を際立たせて楽しむ面白さを示した。
ホンダアクセスの広報によると現在、4月の完成を目指して製作中とのことだ。
外板部品のCFRP化し軽量化に貢献
車両概要は、動力と駆動系は市販車のままでありながら、軽量化やサスペンションの調整、加速性能に適したタイヤ寸法の設定などによる改良が進められている。そのうえで、競技車両としての安全装備としてロールケージが取り付けられる。
軽量化部分では、内装の簡素化や、外板部品のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)化、窓ガラスのアクリル化などが進められている。そもそもホンダeは、市街地での利用を主な狙いとしてリチウムイオンバッテリーの搭載量を抑え、市販の標準車でもEVとしては軽量な1510kgしかなく、そこからどこまで軽くなるのか興味深い。BMWのEVであるi3は、カーボンモノコックを採用することで、1260kgという軽量に仕上げられている。
タイヤには、レース用のスリックが用いられる予定で、これを取り付けるためNSX用の17インチ径ホイールが選ばれたという。
まだ詳細な性能諸元は発表されていない。しかし単なる出展車両ではなく、来春以降に実戦参加を予定した開発でもあり、4月の公開時には、どのような0~400m性能が発表されるのか? 楽しみだ。
ちなみに余談ながら…私は20年ほど前に米国でERK(エレクトリック・レーシング・カート)の6輪車でドラッグ競技に参加したことがある。カートとはいえ、シグナルが青になった途端アクセル全開で加速させれば、低速トルクの大きなモーターが間髪を入れず後ろ4輪に駆動力を伝え、猛然と加速する様子を体験した。
スタートから200m地点で最高速に達し、400mのゴールまでは惰性で速度を維持することになったが、逆に、EVは、とにかくスタートダッシュが強烈だということを、身をもって実感したのである。
このことから、0~400mの直線が必ずしも準備できなくても、200mで十分にEVならではの、モーター駆動の強烈な瞬発力に触れることができることを確信した。EVモータースポーツは、エンジン車で積み上げられてきた歴史をなぞるだけでなく、EVであるからこその競争の場があるべきとの思いにも至ったのである。
e-DRAGの完成は、永年にわたり2輪GP(現モトGP)や、4輪のF1、インディカーなどを戦い続けてきたホンダならではの、次世代スポーツの表現の一つになるのではないか。