「ロングノーズ・ショートデッキ」の名車を「名軽自動車」で再現!
東京オートサロンは多くの自動車メーカーやプロショップによる最新のカスタムカーやパーツ類の発表の場とされているが、その中にあって毎回ギャラリーの注目を集めているのが、日本自動車大学校(以下、NATS)カスタマイズ科の生徒たちが製作したカスタム車両だ。出展する車両は、奇抜さや話題性を狙う班もあれば、プロショップが作ったような細部にまでクオリティを追求した班もあったりと、老若男女見る者を楽しませてくれる。
今回紹介する2020年出展時のカプチーノはご覧の通り「トヨタ・2000GT」をオマージュ。製作する学生たちが平成(しかも中期)生まれということもあり、彼らが生まれてない時代のレース車両や、彼らから見ればおじいちゃん世代の愛車にあたる旧車たちを鈑金・塗装で再現することもしばしば。そんな彼らが2000GTを題材に選び、そしてそれをカプチーノでどう仕上げていったのか、ご紹介していく。
この世に2台だけ存在する「ボンドカー」をオマージュ
ショーネームは「NATS 2020GT」。トヨタの名車2000GTを思わせるフォルムのそれは、屋根を開けると映画「007は二度死ぬ」でボンドカーとして使われた思い浮かべる人もいるハズ。2000GTの市販車はクーペのみで、オープン仕様は映画用としてカスタムされた2台(撮影用と予備用)だけの特別な車両だったのだ。とはいえ、2000GT(1967年~1970年)も映画も1967年公開と、半世紀以上も前となるので劇場で観た人は少ないかもしれない。
そんな超希少車に目をつけたのが「NATSカスタマイズ科」6班の学生たち。この6班は旧車好きが集まったグループ。それもあり今回のモデル製作に至ったのだが、2000GTのフォルムを再現するベースとして、ロングノーズ&ショートデッキの車両を探したのだが、紆余曲折を経て合致したのがカプチーノだった。
「製作に使える予算は、車両代を含め上限100万円以内。カプチーノは中古車市場でも根強い人気があり、最低限走れる状態の個体でも40万円もするんですよ。なので錆び錆びでいたる所に穴が空いていて、カーペットを剥がしたらアリだらけだったという、格安車両を見つけたのでそれをベースにしました。それでも10万円しましたが(笑)」。
そんなベースだったこともあり、カスタマイズ以前にまずはレストア作業。まずは「ドンガラ状態(装備品を全て外したフレームのみ)」にした後にボディのサビ取りや塗装、穴の空いた各所の溶接、ミリ単位でのフレーム修正などを行った。それが完了したのが作業開始から約3ヶ月が過ぎた頃だったという。
70年代の「ワークス」をプラスしてそこはかとなくワルっぽく
レストアを終えていよいよカスタム。7人のメンバーは手分けをして作業を進めた。250ミリ延長したことで丸みを帯びたロングノーズを含めた前後のバンパーや、フェンダーは鉄板加工で成形。2000GTのそれを意識した、湾曲したボンネットはFRPでイチから作る。
2000GT好きの方ならご存知かと思うが、ノーマルのそれにオーバーフェンダーは採用されていない。が、メンバーの中に70年代のワークススタイルが特に好きなメンバーがいて「2000GTにバーフェンをつけて、車高を落としたらカッコイイんじゃないか」と提案して採用された。そのオーバーフェンダーは大阪のカスタマイズメーカーESB製を購入して加工、そのフェンダーに収めたホイールは「これ以外ない!」と、メンバー満場一致で決まったというRAYSの「ボルクレーシング TE37V」だ。
リアに回って見てみると、鉄板加工で一体化したリアバンパーとワンオフのダックテールに、テールランプはトラック用の汎用LEDを用いて、丸テールを表現。オーバーライダーはFRPにてワンオフ。大阪のマフラーメーカーJワークス製のセンター出しタイプをチョイスして取り付け、クラシカルな雰囲気に仕上げている。
取材時に6班のメンバーに感想を聞いてみたところ「オートサロン時に配るパンフレットに載せるため、撮影前日まで徹夜作業が続きましたが、それもイイ思い出です」「スポット溶接の器具を持ちながらの作業が大変! でも完成して感動しました!!」「フレーム修正機にかけて1ミリ単位での作り込みに苦労しました」など、みんなイイ思い出と経験値アップに繋がって、満足顔だったのが印象的だった。