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公道には不向きだが「コンマ1秒」を削るアイテム! クラッチ操作のいらないMT「ドグミッション」って何?

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明、FCA、Auto Messe Web編集部

ドグミッションはクラッチ不要で変速も可能

 そして、今回ここで紹介するのは、ドグミッションである。ドグミッションは、そもそもの構造から違っている。いわゆる街乗りのクルマに搭載しているMTといえば、シンクロメッシュのミッションを指す。シンクロメッシュというのは各ギヤの回転数を合わせて変速をしやすくしてくれるもの。ミッションケース内に納まるドグミッションの歯車

 変速という操作は皆さんご存知の通り、アクセルを戻し、クラッチを切って、シフト操作をして、再びクラッチをつなぎ、アクセルを踏むという操作になる。この変速時にシンクロナイザースリープが押されてシンクロナイザーリングと噛み合って変速が完了する。ギヤの回転を同調させて変速している関係上、一旦エンジンの動力を遮断して変速するのだ。同調させるシステムなので、どの回転域でも変速ができるのだ。ドグ歯が6枚の写真にある繁原製作所のドグミッション 一方のドグミッションは、そのシンクロ機構を持たず、エンジンの回転数とミッションの回転数を合わせられれば、クラッチ不要で変速も可能となる。前述のシンクロ機構はギヤの回転数を合わせてくれるが、ドグミッションにはそのシンクロ機構がないため、自身で双方の回転数を合わせて、ドグ歯にぶち込むというイメージだ。アバルト695ビポストに搭載されたHパターンドグミッション

 シンクロミッションと違ってクラッチを切らずにシフトアップ&ダウンが可能だ。バイクのミッションはシンクロ機構を持っていないので、ドグ同様にクラッチを切らなくてもギヤのアップダウンができるのと同じだ。繁原製作所のドグミッションは6枚歯の凹凸形状のドグ構造を持ったミッション 繁原製作所のドグミッションは6枚歯の凹凸形状のドグ構造を持ったミッションとなる。シンクロメッシュのような機構を持たないこともあって、ハイパワーなレース車両に要求される強度と信頼性が高い。そしてシフトチェンジの素早さもメリットだ。

 もちろん、マイナス面を挙げれば、シフトショックが大きかったり音が大きかったりする。そのショックを減らす乗り方としては回転数を合わせるためにダブルクラッチ操作をして調節するということもあるが、イコール街乗りではやはり扱いづらい、ということになってしまう。走り出してしまえばサーキットではクラッチレスでシフト操作ができるため、タイムのロスが少ない

 ドグミッションは、ミッション自体が高価で、さらに定期的なメンテナンスが必要であるため、いわゆる一般的なチューニングとしてのチョイスはあまりないだろう。ただ、コンペティティブな世界では、このミッションは交換する価値のあるもの、なのだ。

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