熟成された海外事情、そこへ向き始めた日本企業、それを阻む「税金問題」
ここ最近、いわゆる「旧車ブーム」だが、中でも人気なのがバブル時代前後に登場したクルマたちである。ところでいつから「旧車」扱いになるのだろうか。モデルチェンジしたら? 一定期間が過ぎたら? そうだとして、その「一定期間」とはどのくらい? 今回はこの辺りを探りつつ、国内外の旧車に対するレストア事情や、旧車好きにとって恐らく一番の壁になる「税金問題」に関してクローズアップしていきます。
旧車の定義と旧車に対する海外の姿勢とは
旧車の条件は明確ではない。それでも、少なくとも昭和のクルマは旧車に入るだろう。しかし、たとえば人気のR32スカイラインGT-Rは1989年に誕生し、それは平成元年でもある。すでに32年が経ち、旧車といって差し支えないのではないか。
国によって程度の差はあるが、欧州では数十年あるいは70年代初頭以前のクルマはクラシックカーの扱いとなり、減税対象になるようだ。ただし、文化的遺産としての価値が尊ばれるため、新車時の純正の状態にあることが求められる。改造したり、外部の部品を使っていたりすると対象とならないとのことだ。そこで、欧州の自動車メーカーなどはかなり古いクルマの部品も供給体制を整えている。
たとえばボルボ・カー・ジャパンのクラシックガレージでは、多くの部品をスウェーデン本国から取り寄せてレストアを行っている。ドイツでは、メルセデス・ベンツがクラシックカーセンターを運営し、あらゆる年代のクラシックカーのレストアを請け負っている。レストアが可能となるのも、部品が揃ってこそのことだ。
もちろん費用は掛かるが、そこまでしてクラシックカーを保存し、所有しようとする人に対し、免税措置が取られるわけである。
進みつつある国産車の「レストア事業」とそれを阻む「税金問題」
日本の自動車メーカーも、近年は旧車のレストアに力を入れるようになっている。象徴的なのがマツダの初代ロードスターのレストアで、マツダ自身が手掛けている。
しかし、現実的には初度登録から13年が過ぎたクルマの自動車税は重課となる。理由は単に環境性能が下がるからということだが、近年の新車の環境性能はいずれも高くなっており、13年くらいで環境性能に差が出ることは少ないはずだ。もちろん走行距離が延びることにより、排ガスの後処理装置の機能が低下することはあるだろう。一方で、古くなっても走行距離の少ないクルマもあるわけで、日本の税制は年式だけで一刀両断する情けのない制度だ。
世界的に排出ガスゼロの動きはいっそうの強化が求められており、欧州と同様に旧車で日々走り続け距離を稼ぐ乗り方は制約を受けるべきだ。しかし、日本の成長を支えてきた旧車は海外でも人気を集めており、米国では25年過ぎたクルマは右ハンドル車でもそのまま登録できる制度があり、当時は輸出されていなかったGT-Rなども走れるようになり、国内が品薄になってきているとの話もある。
日本という国は、単に金儲けの商売で組み立てられた国なのだという寂しさを覚えずにはいられない旧車への対応である。