気が付いたら手が届かない価格に……
中古車の中には、年式相応・程度相応で順当に価格が下がっていく車種、クルマの性能や装備を考えると不当に安く感じる車種、そして思った以上に価格が高騰している車種がある。
なかでもスポーツカーは、以前の相場感に比べて価格が高くなっている印象が強い。しかも、1960〜70年代の「ヒストリックカー」世代ならまだしも、80〜90年代のクルマも、気が付いたらそうそう手が出せないほどの価格帯になっているではないか。ちょっと前までは、なんとか買える額だったのになあ……。
まさかの250万円超え! ホンダ・シビック タイプR(EK9型)
1997年、6代目シビックに追加された初代の「シビック・タイプR」(EK9型)。1.6リッターながら185馬力という最高出力、1070kgという軽さにより生み出されるパフォーマンスは刺激的だった。新車価格は199万円。
現行型のタイプR(FK8型。現在、売り切れ)は最高出力が320馬力に、価格も安いモデルで472万円にまで達してしまっているが、このご時世にスポーツ色の 極めて強いスーパーハッチバックを出してくれていることに、感謝をしなければならない。
とはいえ、EK9型の「手軽でめちゃ速いホットハッチ」を懐かしむ人も多いだろう。それもあってか、現在の価格は200万円オーバーがデフォルト。中心価格帯は250万円前後だ。走行距離は10万キロ超も多く、中には25万キロを超えている個体も。400万円・500万円前後も散見され、最高価格はなんと798万円!
バージョン1は470万円!? スバル・インプレッサWRX STI(初代・GC8型)
1990年代のWRCでも活躍し、多くのファンを虜にした「スバル・インプレッサWRX」は、1992年にデビューした初代インプレッサの高性能版。さらに、スバルテクニカインターナショナルが手がけた「WRX STi」も設定され、「速いハコ」の魅力をさらにアップした。WRX STiは、当初改造車扱いだったが、バージョンIIIからは正式なカタログモデルに昇格。最終的にはバージョンVIまで発売が行われた。
程度の差による価格幅が大きいのは他の車種と同じだが、初代インプレッサWRX STIの全体的な相場は上昇しており、中心はバージョンIV〜VI の250〜300万円。バージョンIVの2ドア、「WRX タイプR STiバージョン」は300〜500万円ほどになり、価格帯が上がる。また、WRX STIバージョンIの中には、470万円という価格も。さらに驚きなのが、3300万円の「22B STI version」! WRC3連覇を達成したラリーカーのイメージを再現した400台限定モデルだが、もはやかつてのスーパーカーよりも高い。
程度が良ければ250万円前後のトヨタ MR2(2代目・SW20型)
「フィアットX1/9」のように、FF量産車のコンポーネンツをそのまま利用して、リーズナブルなミッドシップスポーツカーを作る方法で生み出された「トヨタ MR2」。1989年にデビューした2代目(SW20型)からは、排気量を2リッターまで拡大して性能をアップ、ボディも大型化するとともに流麗なスタイルを得た。
90年代を代表する国産スポーツカーとして、同門のスープラや同クラスの「ホンダ S2000」の価格が高騰しているが、2代目MR2も相場があがっており、気がつけば200〜250万円台がボリュームゾーンに。たしかに高価になってしまったが、本格的なMRスポーツカーというMR2は、今後も早々出てくるような種類の車ではないので、250万円という価格にも今となっては価値があるように思える。5ナンバーボディのコンパクトさも魅力だ。
こちらも相場は250万円……軽のマイクロスポーツカー「オートザム AZ-1」(PG6SA型)
今や軽自動車はスペース効率重視で、ミラやアルトのような「1.5 BOX型」すら数を減らしており、スポーツカーといえば「ホンダS660」だけがひとり気を吐いて頑張っている。そう思うと、軽の本格的マイクロスポーツカーのABCトリオ……すなわち「オートザム AZ-1」「ホンダ・ビート」「スズキ・カプチーノ」を同時に売っていた90年代は、やはりスゴい時代だったなあと思う。
中でもMR(ミッドシップ)+ガルウイングドアという、エキゾチック・スーパーカーも真っ青なスポーツカー「AZ-1」は、その贅沢な設計にバブル期の勢いを感じさせる。
AZ-1は以前からプレミア価格傾向だったが、今ではそれがさらに上がり、主に180〜250万円前後で流通している。今回確認した最高価格帯には、マツダスピードのチューンパーツ(ツーリングスペックAキット)を組み込んだ「マツダスピードバージョン」があり、その販売価格は348万円である。うーむ、希少価値を考えると、この値付けが高いのか安いのか、わからなくなってきた!
海外でも大人気! 300万円オーバーもある「日産・フィガロ」
最後はスポーツカー以外を取り上げよう。日産が80年代末から90年代にかけて発売した「パイクカー」の「Be-1」「パオ」「フィガロ」は、以前は残存数も多く、価格も手に入れやすい水準にあった。
しかし発売から30年前後を過ぎたこと、もとより台数が少ないこと、さらには、フィガロは海外に輸出されてカルトな人気を誇っていたりする(イギリスには、フィガロのオーナーズクラブまである)ため、これも気がついたら早々手に入れにくいクルマたちになってしまった。フィガロを例にとると150〜200万円の個体が多く、最高値は230万円ほどする。
しかし、パオやフィガロの特徴は「他にクルマにはない、圧倒的な個性」であり、欲しいユーザーにとってみれば、価格はあまり気にならないかもしれない。
大切なのは個々の「価値観」
今回あげた5台以外にも、価格が高騰しているモデルが多数ある。しかし、30年前後経過していることや、希少性・価値を考えれば、いつまでも昔日の価格帯で売ることができないことを理解しなければならないだろう。
また、現在まで残っているクルマは、逆に言えば長年にわたる整備を受け続けて状態が良いことも多く、それも価格を高める要因にもなっている。とはいえ、あまりにも高価になり過ぎて、「こんなに高くて誰が買うのだろう?」という中古車があるのも事実である。
いずれにせよ、それを高いと思うのか、安いと感じるのかは、個々の感覚や価値観によるものなのは間違いないことだ。