老舗ブランドの新フラッグシップ
日産車を専門に扱うカスタマイズパーツ・ブランドで、「日本一速い男」と呼ばれた元トップレーサーの星野一義氏がプロデュースするインパル。その有名チューナーが、ついに最高出力405psを誇り歴代モデル最強の呼び声が高い日産「スカイライン400R」用の新作エアロ「インパル537S」を発表した。
2020年6月で40周年を迎えたインパル。その最新エアロは、数々の名作パーツを作り出した経験や伝統を継承しつつも、しっかりと時代を捉え、スポーツセダンの新たなスタイルを主張する意欲作だ。しかも、新しくサスペンションやマフラーなども開発し、トータルで走りが楽しめる提案が盛りだくさんとなっている。
ここでは、同ブランドの新フラッグシップともいえる400R用エアロをはじめとする最新パーツ群を通し、インパルのこだわりや、これからの目指す方向性などについて紹介する。
日本一速い男がプロデュース
1980年の設立から今まで、数々の名作パーツを世に送り出してきたインパル。母体となるメーカー「ホシノインパル」の代表は、1970年代から2000年初頭まで、日産ワークスのレースドライバーとして活躍した星野一義氏だ。数々の栄光を手中にしたことで国内では敵なしといわれ、日本一速い男と呼ばれた星野氏は、レーサーのかたわらインパルにも従事。メージャーリーグで活躍したイチロー氏も乗ったことで有名になったK11型マーチのコンプリートカーや、セダン系カスタムで大ブームを巻き起こしたY31型シーマ用エアロ「731S」など、今まで数々の名作を生み出している。
現在、インパルの商品開発は、星野氏の長男で、スーパーGTの現役ドライバーである星野一樹氏が担当。日本一速い男の熱いDNAを、現代風にアレンジしたオリジナルのアイテムを製作しており、今回の400R用パーツも一樹氏の手によるものだ。そこで、今回は東京都世田谷区にあるインパルのショールームで、開発者ご本人に話を聞いた。
価格よりデザインを優先した理由
最初に、新作エアロ「537S」について紹介しよう。まず、フロントには“大胆”にもフルバンパータイプを採用する。なぜ大胆かというと、最近のエアロは、純正バンパー下部に装着するだけのハーフタイプやリップタイプが主流だからだ。純正部品をそっくり交換するフルバンパータイプは、ハーフタイプと比べると圧倒的にデザインの自由度は高いが、価格が高くなり、装着にも手間や費用がより掛かる。
インパルでも、近年は例えばセレナ用エアロなど、ハーフタイプのバンパーを採用する車種もある。だが、そこはやはりハイスペックな性能を持つ400R。開発した星野一樹氏によると、「400R用エアロは、インパルの中でもかなりの上位グレード、フラッグシップ的な意味合いがある。そこで、(価格よりも)レーシーで攻撃的なインパルらしさを表現することにこだわった」という。イメージするフェイスデザインを具現化するために、価格よりも一目で違うと分かるスタイルを優先したのだ。
また、素材にもこだわった。コストは掛かるが、より自在な成形が可能なFRPを使用した。最近のインパル製品には、車種によってABS樹脂製エアロもあり、それらは塗装済みで販売しているものも多い。装着時に手間が掛からないため好評だ。
一方、400R用エアロに使われているFRPの場合は、実車との微妙な色合わせが必要となる。だが、デザインを重視するとFRPは必須、ある程度価格が高くなることは承知で、装着時に塗装する未塗装品のみの仕様とした。
攻撃的なフロントフェイス
様々なこわだりを盛り込んだ甲斐があり、見事にフロントフェイスは一新された。特に、逆台形となったグリル形状は、純正のVモーションを活かしつつも、よりアグレッシブなイメージを演出している。また、左右の開口部も面積が増した分、よりシャープな印象を加味する。しかも、星野氏いわく「センサー類は純正品を移植できるようにした」ことで、先進の安全運転支援システムなどもそのまま使うことができる。
インパクト満点のフロントに対し、リヤやサイドのエアロは、比較的抑えめのデザインとなっている。リヤバンパーは、ディフューザー形状を取り入れたハーフタイプを採用。サイドステップも後部にダクトを設けつつシンプルな形状とし、微妙なラウンド状にすることで整流効果にも考慮した。
驚くのは、これらが見事にマッチすることで、決して派手過ぎない絶妙なバランスを醸し出していることだ。フロントバンパーでレーシングマシンを彷彿とさせるスポーティさを演出しながらも、全体的なフォルムでは「エレガントさも両立させた(星野氏)」ことで、大人も楽しめるラグジュアリースポーツ的な仕上がりとなっている。
価格(税別)は、前後バンパーとサイドステップのセットで36万円。リヤトランクに装着するタイプのFRP製ウイングも入れたセットでは42万円となる。価格面でも、インパルのラインアップ中でトップクラスだ。だが、高性能セダンである400Rは、日産車の中でも、スポーツやレースのイメージが強いインパルにとっては特別なクルマだ。デザインを妥協し価格を下げることで数量を売るよりも、インパル・ブランドのエアロを待ち望むユーザーの期待に応えることを選んだ。
ちなみに、モデル名の537Sについて。昔からのファンならご存じだと思うが、インパルでは歴代のスカイライン用エアロには、すべて「5」の型式を付けてきた伝統がある。それを継承し、スカイラインの型式「V37」をドッキングした名称だ。なお、リリースは2021年8月の予定となっている。