Mクラスミニバンのパイオニア
1996年、日本のファミリーカーの概念を変えるクリエイティブな多人数乗用車が登場した。それは1994年登場のアダムスファミリーのCMでも盛り上がった初代「オデッセイ」、1995年登場の世界的ヒットとなったクロスオーバーSUV(そうした言い方は当時まだなかったが…)の「CR-V」に続く、ホンダのクリエイティブムーバー第三弾、かつ乗用車ベースの「ステップワゴン」である。
初代 RF1/2型(1996〜2001年)
1996年と言えば、アトランタオリンピック開催、のちに東京モーターショーが開催されることになる東京ビッグサイトの開場、“アムラー”やルーズソックスの流行、さらには社会現象ともなった「たまごっち」の大ヒットなど、日本がバブル崩壊を乗り越えイケイケ状態だった時代だ。
ちなみに、いま売れに売れているMクラス・ボックス型ファミリーミニバン御三家の日産セレナがFF化され、国産ミニバン初の両側スライドドアを備えたモデルが1999年、トヨタ・ノアは2001年のデビューだから、ステップワゴンがこのジャンルのパイオニアであることは間違いないところなのである。
ここで日産セレナが「国産ミニバン初の両側スライドドアを備えたモデル」と聞いて、「あれ? 1996年デビューのステップワゴンじゃないの?」と、思った方がいるかもしれないが、じつは初代と2代目(2001年〜)までは両側スライドドアは持っていなかった。そう、車体左側(歩道側)のみにリヤスライドドアが設けられ、車体右側はフロントドアだけだったのである
その理由は「コストを抑えるためと、ホンダの走りのこだわりから、ボディ剛性確保のため」、それが当時の開発陣の口から出た答えだったと記憶している。ちなみにフリードには3列シートに加え、ラゲッジスペースをガレージ風にアレンジできる2列シートのフリード+があるが、すでに1996年時点で、ステップワゴンにも3列シート8人乗りと、2列シート5人乗りがあったのだ。このあたりも時代の先取りと言っていいだろう。
ボックスタイプでありながら、どこか洗練された雰囲気が漂っていた初代ステップワゴンは、もちろんファミリー層、子育て世代にバカ受け。さらにデザイン関係、ファッション関係のオシャレ層にも流行した。クリエイティブムーバーはなるほど、クリエイティブな人たちにも受け入れられたのである。例えば2列目席の2:1分割回転対座シートを選択すれば、車内で打ち合わせなどもでき、多人数乗用車としてだけでなく、走るオフィス、クリエイティブ空間としても便利だったのである。