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突如立ちあがる「暴力的な加速」! 昭和のクルマに「ドッカンターボ」が多いワケ

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: 日産、ポルシェ、Auto Messe Web編集部

圧縮比を低く設定していたのも大きく影響していた

 量産車のターボエンジンは、1962年のオールズモビルF85カトラスとシボレー・コルベアへのオプション設定が最初とされるが、実質的な元祖は1973年に登場したBMW2002ターボからだ。さらにそこから1年遅れてポルシェ911ターボ(930型)がデビュー。国産車では1979年の430セドリック(グロリア)が日本初のターボとなる。この430セドリック以降、80年代後半までの国産ターボはターボラグが大きく、いわゆる「ドッカンターボ」のクルマが多かった。日本で初めてターボエンジンを搭載した日産セドリック

 なぜこの時代のターボ車が「ドッカン」だったかというと、パワーとパワー「感」を優先してタービンサイズが大きかったのもあるし、制御技術が未熟だったのもある。加えて、初期のターボエンジンはノッキングを押さえるため、圧縮比を低く設定していたのも大きく影響していたのは間違いない。ポルシェ911ターボ(930型)のKKKタービン

 圧縮比が低くなると、エンジンの爆発圧力も小さくなるため、圧縮が低いNAエンジンや過走行で圧縮の抜けたエンジンは、言うなればスカスカでヘロヘロだった……。その事情はターボエンジンでも同じで、圧縮比が低くターボが効かない負圧のNA領域ではまったくパンチ力がなく、トルクが小さくアクセルレスポンスが悪かった。低回転域ではパワー不足のドッカンターボ時代のクルマ

 それでいて、過給がかかって正圧になると急激にパワーが立ち上がるので、ドライバビリティの悪い、両極端なエンジン特性にしかならなかったというわけだ。ある一定の回転に気になるとターボが効き始めるため、トリッキーな動きをするクルマが多かった

ターボエンジンの圧縮比はNAエンジンのマイナス2.0がひとつの目安だった

 数字で見ると、BMW2002ターボの圧縮比が6.9。ポルシェ911ターボ(930型)が6.5。430セドリックのL20ET(直6 SOHCターボ)が7.3、どっかんターボで知られるスカイライン2000ターボRS(R30)が、8.0だった。スカイラインRSの諸元表

 ターボエンジンの圧縮比は、NAエンジンのマイナス2.0がひとつの目安といわれているが、いくらターボで過給しても、圧縮比が8.0以下では低回転域のレスポンスが悪く、過渡領域にトルクの谷間ができて、ターボラグが目立ってしまう……。突如加速モードに入る80年代のターボ車はまさに「どっかん」だった

 その後1980年代後半になると、メーカーもターボの特性がわかってきて、インタークーラーをつけたりターボを小さくしたり、ツインターボにしたりしつつ、圧縮比を徐々にアップしていった。

 スカイラインGT-RのRB26DETTエンジンの圧縮比は8.5になり、トヨタでも70スープラのツインターボ、1G-GTEUエンジンは8.5。280馬力になった1JZ-GTEエンジンも8.5となる。さらに「リニアチャージコンセプト」を謳ったR33スカイラインのRB25DETでは、9.0まで高めている。これは当時のターボエンジンとしてはかなり高圧縮で、低速域からトルクがありアクセルレスポンスも上々だった。日産スカイラインGT-R(R32)からはターボがマイルドな味付けとなった

 ちなみに現行のスカイライン400Rに搭載されているVR30DETT(V6DOHCターボ)の圧縮比は、10.3! ひと昔前のNAエンジンに匹敵する高圧縮比なので、405馬力のハイパワーを誇りながら、シャープなレスポンスを実現している。日産スカイライン400Rの圧縮は10.3と昔のNA並みの高圧縮比だ

 こういうエンジンが出てくると、ガソリンエンジンもまだまだ面白くなる余地があると思うのだが……。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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