リスクの高いサーキットでの離れ業
サーキットで速さの絶対的な基準となるラップタイム。コンマ1秒を削るため誰もが並々ならぬ情熱を傾けるが、時にはそれが仇となってしまうこともあるという。「人の振り見て我が振り直せ」のことわざどおり、反面教師にピッタリなトラブルの例を紹介しよう。
【ギリギリのガソリン】
街中であればJAFのお世話になる程度で済むけど、全開走行中はエンジンブローにも繋がるガス欠。よく言われる「軽量化に勝るチューニングなし」は確かに正論で、レースでは予選の時間や決勝の周回数から必要なガソリンの量を算出し、ギリギリしか入れず重量増を抑えるのは昔からの常套手段だ。
当然その手法はチューニングカーでも有効だが、燃料が噴射されなければエンジンが焼き付くなど、重大なトラブルを引き起こす可能性が高い。また燃料タンクの構造によってはストレートなら問題ないのに、コーナーの横Gでガソリンが偏りガス欠の症状が出ることも。エンジンブローまでいかずともコース上で停止するのは、ほかの参加者にとって危険だしクルマを回収する手間もかかる。ガソリン満タンとまでは言わないが、ある程度の余裕はリスク回避のために必要だ。
【規定量以下のエンジンオイル】
次はエンジンオイル。油膜はエンジンを摩擦から保護してくれると同時に、抵抗にもなるのでレスポンスを重視し規定量より減らす場合がある。ただしはオイルパンの形状やオイルポンプの位置が悪く、傾きに弱い車種というかエンジンも少なからず存在し、規定量より多く入れないと危険な場合もあるので注意。
ガソリンと同じくストレートではまったく問題ないのに、コーナーで全開にしたらオイルを吸わず油膜切れを起こし、エンジンブローしたなんて話は決して珍しくない。勾配やコーナーのRも関係してくる話なので、どうしても実践するならその車種やコースに詳しいプロショップの判断を仰ぐのが妥当。
【エアクリーナー外し】
次は今でこそやる人はほぼ見かけないが、懐かしの「エアクリーナー外し」について。当時から「効果は無く変わるのは音だけ」と否定派も少なくなかったが、吸気抵抗が減ると信じエアクリーナーを取り外す人が後を絶たなかった。
エアクリーナーにはゴミや小石といった異物を濾過する役割があり、外すことでどんな弊害があるかは説明せずとも想像できるだろう。即ブローとまではいかないにせよ、エンジンの寿命を縮めることは間違いない。
【正体不明のハイグリップタイヤ】
続いてはタイヤに関する事例。仲間に中古のハイグリップタイヤを譲ってもらったり、オークションで購入して意気揚々とサーキットを走ったら、さっぱりグリップせずクラッシュしたなんて話を聞いたことはないだろうか。
ゴム製品であるタイヤは経年劣化により性能が低下することはよく知られているが、Sタイヤをはじめとする走りに特化した銘柄は何年にも渡って使うことを想定しておらず、いわゆるストリートラジアルに比べて“賞味期限”が著しく短いのだ。製造年月や保管状態でも性能の落ち幅は変わるので、古すぎたり出どころのわからないハイグリップタイヤは使わないのが無難。