10年以上経過している場合は要交換
このところ人気も再燃し、中古車価格も高騰してきている1990年代の名車たち。第二世代の日産スカイラインGT-R、マツダのロードスターにRX-7、ホンダのS2000、トヨタの80スープラ……。これらのクルマのオーナーは、定期的にメンテナンスし、大事に乗っている人がほとんどだろうが、テンパータイヤ(応急用タイヤ)のチェックを忘れてはいないだろうか?
最低でも車検ごとに空気圧を点検・調整していれば問題はないが、ずっとトランクにしまったままノーチェックという人は、いざというとき空気が抜けていて使えないということも! 新車時から一度も使っていないという人も多いだろうから、未使用とはいえ、20年以上前のテンパータイヤがいまでも使用可能かどうかはかなり気になるところ。
一般のタイヤについては、タイヤメーカーも「製造後10年経過したタイヤはゴムの経時劣化が進んでおり、安全面での性能が保証されないため、新しいものに交換することをおすすめします」とアナウンスしている。そこでタイヤ専門店の「嘉衛門 横浜青葉店」の 森田店長に、テンパータイヤの交換時期を訊いてみた。
たとえ未使用でも年数が経過したら交換が必要
「テンパータイヤもスペアタイヤ(純正と同じサイズの予備タイヤ)も基本的に一般タイヤと同じになります。外観でまだ使えるなと思っても5年以上経過したタイヤを使用する場合、タイヤ販売店などで詳しく見てもらったほうが安心です。当然ですが、走行しなければタイヤの溝がすり減ることもありませんが、10年以上経過している場合は強く交換をオススメします」。
ただ、保管方法や保管場所によってタイヤの寿命は大きく異なります。過去にスペアタイヤが車体の背面についているSUV車で、スペアタイヤが自然に破裂(バースト)したケースがありました。そのお客様は、『追突された!』と思うような衝撃を感じたそうです。スペアタイヤが紫外線や雨等の影響を受け経年劣化によりタイヤが硬化し、サイドウォールにヒビ割れが発生します。そのままの状態で使い続けると、ひび割れした箇所から水や埃が侵入して内部のスチールワイヤーが錆び、タイヤの強度が下がってしまいます」。
「特に背面やボディ下部など車体の外に着いているスペアタイヤは車内保管よりタイヤのゴムを傷め寿命が短くなる傾向があります。テンパータイヤやスペアタイヤは、応急用だからこそ、いざと言うときに使えるよう、日頃の点検が重要になります」。
テンパータイヤの点検方法は目視のチェックがキモ!
では具体的にどのようなポイントをチェックすればいいのだろうか。
「目視によるチェックがとても重要になります。ひび割れの有無、空気圧、製造時期(年週)の確認がメインになりますが、ポイントは、空気を入れる際に、エアバルブを少し動かしてエア漏れを確認することです。走行中に遠心力が発生し、エアバルブに負荷がかかり少し曲がることがあるからです。また、劣化によりエアバルブそのものが折れることもあります。事故やトラブルを未然に防ぐためにも、エアバルブを少し動かして漏れ等が無いかチェックしてください」。
使用歴のあるテンパータイヤは距離と使い方で交換
「テンパータイヤ寿命は、距離にして約100km程度と言われています(走行環境により異なる)。距離にかかわらず使い方によっては、複数回の走行で交換になることがあります。また、保管状態によっても寿命は大きく変わってきます」。
テンパータイヤの交換はタイヤの組み替えだけでOKなのか?
基本的には、ホイールに錆や歪みなど劣化していない場合に限りタイヤ交換のみで済むという。仮にホイール交換が必要な例を2つあげると、ひとつは「ホイールとタイヤの密着部分」で、リム・ビード部の錆等により凸凹面が発生するとリム淵よりエア漏れの恐れがあるという。そして、ふたつ目は「ナットホール(座面)の劣化・錆の浮き等による変形」だ。ナット・ボルトで締め付け密着する重要な部分なので、最悪の場合ナットの緩み・脱輪の可能性にも繋がる。
「テンパータイヤは基本的に純正形状となり、車体側のハブとぴったり合う形状になっています。社外品のホイールを装着している場合、ブレ防止のためハブリングやスペーサー等パーツをつけている状態だと装着ができないことがあります。テンパータイヤを無理に装着すると脱輪や事故を招くことがあるため注意が必要です」。
テンパータイヤの交換費用はいくらかかる?
気になる価格についても教えてもらった。例えば、R32GT-Rのテンパータイヤ=・T125/90D16(ブリヂストン )は、1万6000円。NAロードスターのT115/70D14 4H100なら、1万4500円とのこと(※いずれも嘉衛門での、組み換え工賃・タイヤ廃棄料・エアバルブ交換工賃を合わせた参考価格。別途バランス工賃が必要で、一部汎用品のゴムバルブが使えない車種がある)。
なお、20~30年前の車種だとすると、タイヤメーカーによっては、すでに生産を終了しているサイズもある。まずはタイヤの専門店などに取り寄せ可能か確認し、入手できるうちに新品タイヤを確保しておくのが肝心だ。
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◆取材協力
◆嘉衛門 横浜青葉店(3月13日にリニューアルオープン)
◆https://kaemon.co.jp/