古代から受け継がれた知恵 竈(かまど)をモバイル可能にした七輪
人類がいつから火を使い始めたのかはよく分からないらしいです。一節によると前期旧石器時代にさかのぼり140〜150万年前とも。火は加熱調理を可能にし暖房であり照明でもあったわけですから、現代人には想像もつかないほど大切なものだったはずです。「炉」はやがて熱効率に優れた「竈」になり、移動可能な火床として生み出されたのが「七輪」です。アウトドアやキャンプに持ち込まれるのも至極当然な由緒あるものなのです。
高い燃焼効率で美味しく焼き上げ 燃料の木炭を節約してくれる
実はこの七輪、昭和30年代くらいまではどの家でも普通に使われていましたが、台所の近代化やインフラの普及によって次第に姿を消していきました。ところが近年、キャンプブームもあって再注目されつつあるようで、通販サイトでも多種多様な七輪がヒットします。キャンプやBBQ向きの金属製の軽量七輪はもとより、オーソドックスな珪藻土七輪も健在です。
そこで今回は、珪藻土から作られる伝統的な七輪を紹介しましょう。
七輪の素材となる珪藻土は、白亜紀以降に長い年月をかけて珪藻の殻が堆積し化石化したもの。その地層が隆起して鉱床となったところから採掘してきます。この珪藻土は多孔質構造のため断熱性・耐熱性に優れ火床としてうってつけの素材なのです。日本国内にも北海道から鹿児島まで鉱床がありますが、愛知三河と石川能登半島が主な産地となっています。
その珪藻土を使っている七輪ですが、製造方法の大きく違うふたつの種類があります。粘土状の珪藻土を型に入れて成形した「練り物七輪」と、鉱床から掘り出した珪藻土を職人が削り出しで製作する「切り出し七輪」があるのです。
「切り出し七輪」の制作作業光景は「ちろり 七輪本舗」のもの。石川県珠洲市の天然珪藻土を鉱床から切り出し、職人さんが一品ずつノミで削り出した後、高温で長時間窯焼きして作り上げられるとあって、最高級七輪の謂れもあります。
また、練り物は低価格が魅力ですが耐久性はやや劣ります。一方の切り出し七輪は熱効率や断熱性が高く比較的軽量です。そして七輪のいちばんの功能は、焚き火やBBQグリルより安定した高温になり、炭火と本体から出る遠赤外線で食材を美味しく焼き上げてくれるということです。
キャンプなどで楽しい焼き物料理をする際に、焚き火などの直火では強力な火力にムラがあり、食材がまっ黒焦げになってしまった失敗もよくあるのではないでしょうか。
日本の食文化を支えてもきた七輪、ならばこそキャンプで願ったりのおもてなしができるかもしれません。数少なですが、こんなものもあるオススメの製品も参考までに並べてみました。