輸入車の福祉車両が乗りたいけど基本ディーラーにないのはナゼ?
国内の自動車メーカー8社(トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スバル・三菱・スズキ・ダイハツ)は、新車購入時に福祉車両が選べる。いっぽうの輸入車は、ラインナップにそれが用意されていないようだ。その理由は何か。また輸入車の福祉車両に乗りたいという人はどうしたらいいのか、その辺りの事情を解説してもらった。
欧米における福祉車両事情の中身
福祉車両の動向だが、海外ではどうなっているのか。欧州はフォルクスワーゲン(VW)、米国はゼネラル・モーターズ(GM)に問い合わせてみた。
まずVWの場合、欧州ではほとんどの車種について、メーカー注文として工場で福祉車両の対応をしているとのことだ。その充実ぶりは、日本のトヨタのウェルキャブに似ているようだ。
ただし日本への輸出は行っていない。その理由だが車種が多いのと、日本と欧州では保安基準の違いもあり、認証を得るための手間や原価が適切な販売価格に見合わなくなってしまうためだ。
福祉車両に限らず、現状販売されている輸入車であっても、単に右ハンドルか左ハンドルかといった違いだけでなく、細かく仕様を変更しなければならない面がある。そのために手間が増え、原価が上がり、新車価格が高くなる傾向がある。
それでもVWの福祉車両を利用したいとの顧客に対しては、販売店とつながりのある福祉車両の架装業者に依頼することをやっているという。
20年以上前には、ヴァナゴン(トランスポーターT4)というミニバンに車椅子用のリフトを装備し、少量販売したこともあった。
いっぽうのGMは本国でも自社として福祉車両を製造することはしていないが、車種によって提携関係にある専門業者へ奨励金を設定しているという。
米国は、もともとカスタムカーなどを製造する業者が多く、また改造したクルマにナンバーを付けるのも容易だ。クルマをさまざまに楽しむ文化が基本的にある。その一環として、市販車を改造することで福祉車両も容易に利用できる環境があるのだろう。
クルマに限らず、住まいの修繕なども米国では自分でやることが多く、D.I.Y(ドゥ・イット・ユアセルフ)が浸透している。プロフェッショナルが使うような修繕や改造のための工具がショッピングモールで買えたり、D.I.Yの店内でエンジンブロックが売られていたりする。自分で工夫して改造し、使いやすくしたり、好みの仕様にしたりということが当たり前に行われる生活環境で、それはまさに「開拓者魂」でもあるのだろう。
障害を持つ人も健常者と変わらぬ様子で外出し、困っているときには周囲の人が気軽の声をかけ、手助けする。健常者も障害者も分け隔てがない暮らしを送る様子を米国では見ることができる。そして障害者用の駐車場に健常者のクルマを停めるような行為もない。もし、そういう人が居たら、周りから非難の声が上がる。そういうお国柄だ。
車両購入に際しての補助金があるドイツ
ドイツからは、福祉車両にまつわる周辺情報も手に入れた。障害を持つ人がクルマを購入する際には、最大9500ユーロ(約120万円)の補助金が得られるというのである。ただしそれは、地域や年収によって金額が抑えられる場合もある。
ここ日本でも、税金の免除などはあるが、購入に際しての補助金制度はない。自治体ごとに改造の助成をしているものの、ドイツに比べればそれも少額だ。他に高速道路などの割引制度もあるが、そもそも欧米では高速道路も無料であるのが基本である。欧米では日本ほど公共交通機関の整備が十分でなく、クルマでの移動が中心となっている地域が多い。そして人が移動することも衣食住と同じように人間の権利としての認識が日本より浸透しており、差別のない社会という視点からも、福祉車両の入手に対し手厚い社会となっているのではないだろうか。