人と違うモノに乗りたいならコレ! 普通に乗れて、普通に使える超個性派セダンたち
自動車に限らず、マーケットは新陳代謝する。そのため、メーカーは新たなマーケット(トレンド)を模索し、多種多様なモデルをリリースするのだが、バブル期のように時代に翻弄されたり、開発陣の志は高いがユーザーミートしていなかったりと、販売面で成功を掴めるのはひと握り。多くの車種が志半ばで撤退を余儀なくされるが、それを失敗と呼ばずに個性と呼ぶのがクルマ好きというもの! 今回はバブル期以降に登場した個性派セダンを紹介しよう!
【トヨタ・ビスタ(5代目)】セダンの理想と未来を追求し続けたトヨタの良心
今はなき、トヨタビスタ店の主力セダンとして1982年に登場し、初代はFF車初のDOHCエンジン搭載車としても話題となったビスタ。また、FF車のメリットを生かした余裕のある居住空間、ガラス面積が広くとったことで開放感も抜群で、派手さはないが「セダンとはかくあるべき」という理想を追求したクルマだった(兄弟車はのちに世界戦略車となるカムリ)。
これは、来るべきFF車時代を見据え、新たなセダン像を模索したトヨタの挑戦であったといえる。2~4代目は時代のトレンドを取り入れつつも、キープコンセプトで作り続けられたが、最終モデルである5代目でトヨタはセダンの生き残りをかけて、新たなファミリーカーのスタイルを模索した。これは同時期に発売された小さな高級車、プログレも同じ考えだ。
5代目ビスタが目指したのはFF車のメリットを最大限に生かしたパッケージをさらに磨きをかけること。その特徴はウエストラインより上方空間を広げ、全高は当時のセダンとしては異例といえる1500mmオーバーに。前後だけでなく、天地までゆとりある空間を確保するスタイルは、当時人気だったミニバンの影響を受けているのは明白だった(フロントベンチシートの6人乗りもあった)。これにより、ガラス面積はさらに大きくなり、広く、明るく、視認性も良好とドライバー、パッセンジャーを含めて快適性は飛躍的に向上した。
ただ広大な室内空間と引き換えに、凹凸がはっきりとし、キャビンが異様に盛り上がった背高デザインとなり、贔屓目に見てもスタイリッシュとはいいがたかった。同様のデザインを持つ2BOXベースのコンパクトなセダンは営業車として販路があったが、大型のビスタではそうした需要も見込めず、アルデオのサブネームを持つワゴンを加えても販売台数は伸び悩んだ。やはり、クルマは見た目も大事というわけだ。
【日産・レパードJフェリー】威風堂々の高級車像を覆す新たなスタイルを模索した意欲作
歴代日産車の中で商品企画と営業サイドに翻弄されたクルマの筆頭に上がるのがレパード。2ドア/4ドアハードトップでスタートし、2ドアクーペのみになったかと思えば、一転4ドアセダンオンリーになる(しかも3代目と4代目のデザインテイストは真逆)など、レパードらしさ、存在感を最後までアピールできなかった。4代続いたレパードの中で最も異色だったのが3代目のJフェリー。
初代、2代目モデルの不振で、次期型の開発は凍結したが、時代はバブル。「クルマが売れに売れていた時期に後継モデルがないのはけしからん」といったかどうかは定かではないが、営業サイドの意向に押し切られる形で、アメリカのインフィニティブランドに投入予定だった「J30型」を3代目レパードとして国内に投入した。
ただ、アメリカ市場を意識した曲面を多用したラウンドフォルムに尻下がりのリアエンドなど、2代目との共通性は皆無。1960年代のジャガーを彷彿させる柔らかなフォルムは、当時の主流であった威圧感のあるデザインとは異なる高級車の可能性を模索していたようだ。エンジンは4.1リッターV8(国内専用)と3リッターV6の高性能エンジンが用意され、ジャガーのネコ足を意識したラグジーだが懐の深いサスやポルトローナ・フラウの本革シートをオプションで用意するなど随所に英国的な味付けが盛り込まれていたのも特徴だった。
意欲的な作品であったJフェリーだったが、やはり、北米ユーザーを強く意識したデザインはやはり日本では受け入れられず、販売は月産100台以下と大不振。日本人は今も昔も威風堂々としたスタイルが好みなようで。
【ダイハツ・オプティ(2代目)】ハードトップセダンという個性で挑んだ軽スペシャリティ
コミューターとして、趣味車としてさまざまなボディスタイルが存在する軽自動車だが、数少ないのがセダン。それはそのはず、ボディサイズに制約がある中で効率を考えるとコミューターとしては不利だし、趣味車としては少しデザインが物足りない。そう考えると軽自動車にセダンを求める層は少ないのだろう。ただ、数は少ないがセダンが存在しなかったわけではない。ただ、現在でも実用で使えるのは今回紹介する2代目ダイハツ・オプティのみだろう。
登場は1998年。初代は丸みを帯びた可愛らしいハッチバックで、一定の人気を得ていたのだが、まるっとデザインを一新。ノッチバックなセダンなだけでなく、現在まで唯一のピラードハードトップを採用するなど、後ろ姿で個性を主張した。
デザインバリエーションも豊かで、丸形2灯の標準車、丸形4灯&エアパーツを装着したビークス、先代で好評だったノスタルジーなクラシックの3種類を用意。軽スペシャリティの新たな形を提案した2代目オプティだが、コミューター派には個性が強すぎ、趣味派には物足りず、この代を持ってマーケットからフェードアウトすることに。保守派が多い軽でスペシャリティカーのジャンルは今もって成立しづらいのかもしれない。