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目線は高いほうが見えやすいハズ! それでも「走り好き」が「シート位置」を下げたがるワケ

シートのローポジション化でクルマの特性も変わる

 “サーキットで速い人はドライビングポジションにこだわる……” 昔からよく言われる決まり文句で、そのひとつがシート座面の高さだ。一般的にスポーツ走行では低くするのがセオリーだけど、その方法やどんなメリットがあるのかを考えてみたい。

一番のメリットは重心を下げられること

 機会があればレーシングカーやプロショップのデモカーなどで、特にドライバーが乗った状態を真横から見てみよう。一般のクルマに比べて頭の位置がだいぶ低く感じるはずで、ヘルメットの下部がドアに隠れて見えないケースもある。速さや機能を極限まで追求したクルマだけに、何らかの理由があって下げているに違いない。まずはローポジション化による最大のメリット、重心が下がることについて考察してみよう。

 クルマを構成するパーツで最大の重量物はエンジンで、レーシングカーはさまざまな手を使って搭載位置を低くしている。エンジンが低くなれば重心も下がり、ロール量が減って動きもクイックになったり、タイヤの接地性が上がるなどメリットは多数。そしてエンジンに次ぐ重量物はドライバーで、シートのローポジション化で得られるメリットも同様なのだ。ロール量つまりクルマの傾きが大きければ恐怖心も増し、ビギナーほど冷静かつ正確に操作することが難しいだろう。

 ちなみに目線の低さをメリットとして挙げる人がいるけど、シートが低くなればなるほど視界は狭くなってしまい、それは逆にデメリットと考えるドライバーも多くいる。ドラテクでは「目の前だけじゃなく先のコーナーを見ろ」というのがセオリーだが、極端なローポジション化は目先のコーナーしか見えなくなるし、左右の視界も狭くドライバーの得られる情報量が減ってしまう。

 座面を低くすることによるもうひとつのメリットは、車種や身長にもよるが頭上のクリアランスに余裕が生まれること。特に全高の低いスポーツモデルでは、純正シートにヘルメットを被って着座すると、頭がルーフの内装に干渉してしまうケースがある。その状態ではまともに運転なんてできないので、シートのローポジション化は非常に有用というワケだ。

低さと同時に正しい運転姿勢が大切

 続いてシートのポジションを下げる方法。基本的には社外製のシートに交換することが前提で、シートそのものの形状とシートレール(シートを車体に固定している部品)によって座面の高さは決まる。なおシートの固定方法によってもダウン量は変わり、一般的に「サイド止め」と呼ばれるタイプは、左右のレールの間にシート本体を落とし込む構造で、通常のタイプよりもポジションを低くすることが可能だ。

 注意して欲しいのは低くすることを優先しすぎて、正確なドライビングポジションが取れなくなること。特にステアリングとの位置関係は非常に重要で、シートが低くステアリングにぶら下がるような姿勢になってしまっては正確な操作なんてできるはずがなく、本末転倒もいいところ。シートの取り付け位置を何段階かに調整できるレールもあるので、よりドライビングポジションにこだわるならそれらを選ぶのがベターだ。

 車種によっては純正シートのままポジションを下げられるレールもあり、街乗りがメインだったりノーマルの外観が好みの人にオススメ。いずれにせよ重心が低いほど運動性能は上がるが、操作性やポジションが犠牲になっては元も子もないので、両者のバランスを見極めつつローポジション化に踏み切ろう。

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