モノを大事にする素晴らしき文化の象徴
メルセデス・ベンツのオーナー表彰制度はメルセデス・ベンツを長年、大切に乗っているオーナーを感謝と敬意を込めて表彰する制度だ。ヨーロッパでは古くから愛車に対する誇りと愛情を示すため、フロントグリルに特別なエンブレムを付けるという習慣がある。さらに、愛車のドレスアップと愛車の誇りを示すための正式な装身具ともいえる。
メルセデス・ベンツ(USA)の資料「メルセデス・ベンツ・ハイマイレージアワード」によると、同社は1960年代に初めて「ハイマイレージ賞」を導入し、25万km(15.5万マイル)を超えてもなお日常的に走行するメルセデス・ベンツのオーナーを表彰。該当オーナーはメルセデス・ベンツが認める正式な受賞者となり、証明書とスリーポインテッドスターが月桂樹で囲まれた伝統のグリルカーバッジが贈呈される。
そして、このハイマイレージ賞プログラムは今日まで続いており、一台のメルセデス・ベンツを長年維持するオーナーの励みやモチベーションとなっていることだろう。
日本のメルセデス・ベンツオーナー表彰制度
このメルセデス・ベンツのオーナー表彰制度について、メルセデス・ベンツ日本(社長:ニコラス・スピークス)では2010年7月1日より開始されている。
制度の内容は、長距離走行した一台のメルセデス・ベンツ乗用車を保有または乗り続けているオーナーを対象としたもので、全国のメルセデス・ベンツ正規サービス拠点を通して感謝状と特製のエンブレム(グリルカーバッジ)がプレゼントされるというもの。表彰制度の詳細は下記のとおりだ。
◆期間:2010年7月1日〜(受付開始)
◆対象:下記の①または②のいずれかに該当するメルセデス・ベンツ乗用車オーナー
①走行距離表彰(保有期間に関わらず、下記の走行距離を達成した車両を所有)
走行距離:10万、20万、30万、50万、100万km以上
②保有期間表彰(一台の車両を長期間保有)
保有期間:10年、15年、20年、25年、30年以上
◆記念品:化粧箱つき特製エンブレム(グリルカーバッジ)
◆手続き方法:メルセデス・ベンツ正規サービス拠点にて申請
2010年7月から日本で正式にはじまった現オーナー表彰制度について、同社のサービス・パーツ部門担当のマークオリバー・ナンディ取締役副社長は「現在、日本では輸入車で最多となる約65万台のメルセデス・ベンツが保有されています。これはメルセデス・ベンツの高い耐久性や信頼性の証です。この表彰制度を通してメルセデス・ベンツに長くお乗り頂いているオーナーの皆様への感謝の意を表したいと思います」と述べている。
自動車メーカーや輸入車業界は一般的に、既存ユーザーには新車への代替え促進するため、長期保有ユーザーに感謝を示す制度は非常に珍しいケースである。これについてメルセデス・ベンツとしては、オーナー表彰制度を導入して正規販売店への点検・整備入庫を促進する狙いもあるのだろう。
日本のメルセデス・ベンツオーナー表彰制度について、筆者が調べてみると下記の事項がわかったのでもう少し詳しく見ていきたい。
●表彰制度の内容
2010年7月1日に発表されたこのオーナー表彰制度をよく調べてみると、その18年前の1992年にメルセデス・ベンツ日本(ダイムラー・クライスラー日本時代を含む)は走行距離オーナー表彰制度のみ実施していた。その期間は1992年8月に導入してから2002年12月末で終了し、保有期間のオーナー表彰が無かった(2002年11月22日までに約800台表彰されたとのこと)。
この走行距離オーナー表彰制度を2002年で終了したのは、メルセデス・ベンツ車両の耐久性が十分認知されたのが主な理由とされている。要するに若干異なる部分があるものの、現在の表彰制度は1992年8月から2002年12月末まで導入されていたものが再開されたといっても間違いではないだろう。
●対象となる保有期間
保有期間表彰については「15年」と「25年」が廃止され(2015年12月末)、現在では「10年」、「20年」、「30年以上」の3種。
●表彰の条件
2018年9月1日より、直近の車検をメルセデス・ベンツ正規販売店で受ける事が条件となっている。
●1992年8月以前の表彰制度
さらに調べてみると、筆者がウエスタン自動車(かつてのメルセデス・ベンツ輸入元)勤務時代にもすでにメルセデス・ベンツのオーナー表彰制度はあった。
というのも、1978年3月にウエスタン自動車・営業部販売課(筆者所属)はメルセデス・ベンツ・ディーゼル乗用車特集の小冊子を作成。その裏表紙に、当時のダイムラー・ベンツ社が1954年W120/180Dのワンオーナーに贈呈した50万km走行距離表彰状やグリルカーバッジなどを掲載した事実があり、筆者もその当時のことを鮮明に覚えている。