世界のメルセデス・ベンツ長距離走行オーナー
筆者が知り得る限り、日本でもっとも長距離を走破している現メルセデス・ベンツのオーナーは、当サイトで先日紹介した1978年式W123/300Dを所有する大阪府在住の八木唯良氏だ。 その記録は現時点(2021年3月)で新車購入から42年、走行距離は111万km以上にもおよぶ。いまも現役で活躍しており(ディーゼル規制適用外となる使用の本拠位置で車庫を所有)、ダイムラー社から贈呈された10万km、20万km、30万km、50万km、100万km走行距離達成の各表彰状に、各グリルカーバッジ、30年保有表彰状も保有されている。特に紺のビロードケースに入った100万km記念バッジは特製の七宝焼き、ピンバッジのスリーポインテッドスターの中央には燦然と輝くサファイアが埋め込まれた逸品だ。
一方、海外に目を向けてみると一部の自動車メーカーは「ハイマイレージ」クラブをサポート。例えばメルセデス・ベンツやボルボには「ハイマイレージ賞」プログラムがあり、25万km、50万km、75万km、及び100万kmを運転する所有者には、その証明書とグリルカーバッジが贈呈される。
さて、現在の世界“メルセデス・ベンツ・ハイマイレージチャンピオン”は、1976年製メルセデス・ベンツW115/240Dで累積走行距離460万kmの記録を保持するギリシャのタクシードライバー、グレゴリオス・サキニディス氏(Mr. Gregorios Sachinidis)だ。2004年12月10日、当時のダイムラー・クライスラー社は、ドイツのシュツットガルトにあるメルセデス・ベンツミュージアムが、この累積走行距離460万kmのメルセデス・ベンツ1976年製W115/240Dの寄贈を受けたと発表している。
同ミュージアムに寄贈したのはもちろん、車両オーナーのサキニディス氏。サキニディス氏は1981年にドイツの中古車販売店で走行距離約22万kmの240Dを購入し、タクシーとして使用してきた。彼はオリジナルと2台のスペアエンジンをオーバーホールしながら、延べ11回載せ替えを行なったものの、1台の車両で2004年7月までの約23年間乗り続けた結果、トータル28年間で累積走行距離460万kmを達成。メルセデス・ベンツ・ディーゼル乗用車の優れた耐久性が改めて実証された。
ミュージアムへの寄贈レセプションで、サキニディス氏にはドイツからギリシャに帰国するのに使用してもらうため、真新しいW203/C200CDIが贈呈された(もちろんメルセデス・ベンツ・ディーゼル乗用車)。
また、ドイツのメルセデス・ベンツ工場で働くミヒャエル・ニッキ氏(Mr. Michael Nicki)所有のメルセデス・ベンツW124/200Dも、走行距離100万kmを突破している。
ミヒャエル氏はメルセデス・ベンツに就職した5年後の1992年にこの車を新車で購入。学生ローンの返済もあり、できるだけ安く購入できたのがこの車だった。エンジンはディーゼルで75HP、トランスミッションはもちろん、マニュアルミッションだ。
55歳となったいま(2017年時点)も乗り続けており、勤務先もメルセデス・ベンツのまま、GLEの組み立てを担当しているそうだ。所有してきた25年間にはクラッチ、オルタネーター、ブレーキ、ウオーターポンプ等寿命を迎えたが、車両自体は至って快調とのこと。そのほかにもトラブルや事故等があり修理を行なったが、リビルトパーツなどを活用してその都度安く仕上げているとのことで、さすがはメルセデス・ベンツ勤務の強者といえる。
特筆はここで紹介した日本および海外の長距離走行のオーナーが長年愛用しているメルセデス・ベンツは耐久性に優れたディーゼル乗用車であること。メルセデス・ベンツのオーナー表彰制度であるハイマイレージ賞は、オーナーのブランドロイヤリティと誇りを示し、メルセデス・ベンツの優れたエンジニアリングと耐久性を証明している。そして、このグリルカーバッジはメルセデス・ベンツの車両が頑丈に造られていることを明白に誇示しているのだ。