ドイツのクラシックカー用「Hナンバー制度」
耐久性に優れた一部のクルマはよく「良いウイスキーのようなものだ」といわれる。このことは年齢とともにさらにクルマの価値が高くなるからである。
世界初の自動車を発明したドイツでは、クラシックカーを守る文化がしっかり根付いていることは周知のとおりで、説明の多くは要さない。それだけクラシックカー愛好家が多く、その価値が認められ、国からお墨付きを貰ったクルマだけが、ナンバープレートの最後に付けられる「H」のマークが付く(Hナンバープレート)。
この「H」は「Historische Fahrzeuge(歴史的なクルマ)」のことであり、つまり国がクラシックカーを保護しているともいえる。クラシックカーを維持し、修理にオリジナル部品を使用した人なら誰でも、このHナンバーを車両技術文化財として登録することができる。歴史的なクルマ、トラック、オートバイの保存を促進するために、このHナンバー制度は1997年にドイツで導入されたものだ。
この由緒あるドイツのHナンバーの条件を満たすクルマを要約すると下記のとおりである。
●生産されてから30年以上経過している
●オリジナルの状態が保たれている
●走行の支障をきたす欠陥が無いと判断された状態である
しかも、このHナンバー取得には厳格な基準が設定されており、公道を安全に走行可能であり、環境負荷を抑えるべく触媒を装着するなど、排気ガスの抑制への対策が施され、シャーシ/エンジンなど、車両各部のチェックを受けて条件をクリアする必要がある。つまり「TÜV(ドイツ技術監視協会)」や「DEKRA(ドイツ自動車監視協会)」などの認定された専門家がクラシックカーをレポートする形で元の状態を確認する。
次にHナンバーの利点を要約すると次のとおりである。
●排気量にかかわらず、年間の自動車税が一律約190ユーロ(1ユーロ=128円で換算して約2万4320円、2021年3月1日時点)に抑えられる
●自動車保険が優遇される
●都市ごとに設定されている環境規制に縛られる事が無く、環境ゾーンの走行も免除される。
●シーズンナンバーという期間限定のHナンバーも用意。年間の税率を12カ月で割って、使用月間分を掛けた額を支払うことができ、Hナンバーとシーズンナンバーを組み合わせて、使用期間分を税金として支払うことも可能
ドイツでは2030年までに純ガソリン車、純ディーゼル車の新車販売禁止を打ち出しているが、一方では30年以上前に生産されたオリジナル状態を維持しているクルマにはHナンバー制度があり、優遇制が受け入れられている。
そして日本に目を移すとどうだろうか。新車新規登録からガソリン車で13年経った車両は自動車税が15%(軽自動車は20%)の重課制度となっている。さらに、自動車重量税は13年超が約40%、18年超で約50%それぞれ重くなるのが現状だ。
ドイツでは「モノを大事にする」「ひとつのものを長く使うこともエコである」という考え方があり、それは自動車文化の歴史が長いドイツならではの自動車に対する解釈である。
特にメルセデス・ベンツは1960年代に初めてハイマイレージ賞を導入し、その優れたエンジニアリングと耐久性を証明している。クラシックカーを敬うという成熟したものの考え方、そこにはもちろん、自動車を発明した責任において、現在まで生産したクラシックカーに負けない魅力ある新車を造り出し続けるという自負がメルセデス・ベンツにはあるといえるだろう。