名車に搭載された名エンジン
クルマの開発コスト、生産コスト、販売価格を抑えるには、他車との流用パーツを増やすのが王道。しかし、一部のこだわり抜いたクルマには、その車種専用に開発されたエンジンが積まれることがある。今回は、そうした贅沢なエンジンをいくつか振り返ってみよう。
日産 RB26DETT
1985年から日本でもグループAレースが始まり、日産もR30、R31スカイラインで参戦していたが、ボルボ240やBMW、ジャガー、フォード・シエラなど外車勢に完敗……。
それらを打ち破り、ツーリングカー世界選手権を制するためには、強力無比なパワーユニットが不可欠。そのために新たに開発されたのが、第二世代のスカイラインGT-R(R32、R33、R34)の心臓部となった直列6気筒の名機、RB26DETTだった。
1986年当時、日産の直6エンジン「RBシリーズ」には、2リッターRB20/2.4リッターのRB24(中近東輸出用)/3リッターのRB30(中近東・豪州輸出用)という、3つの排気量バリエーションがあった。当初はR32GT-Rも、RB24ベースのFRとして開発がはじまった。
しかし、グループAには、排気量ごとに最低重量が決まるレギュレーションがあった。そのため、ターボ係数1.7をかけた排気量が、ギリギリ4.5リッターになるように、RB24をストロークアップし、2568ccのツインターボという仕様に行き着いた。結果、ライバルの3リッターターボ車の最低重量が1420kgに対し、 GT-Rの最低重量は1260kgとなり、160kgのアドバンテージを得ることになった。
このRB26DETTは、RBシリーズのエンジンの中でも別格で、ツインセラミックターボ、大型空冷インタークーラー、6連スロットル、ナトリウム封入エキゾーストバルブ、クーリングチャンネル付きピストン、etc.の新技術を投入。レース仕様では600馬力を想定していて、丈夫な鋳鉄ブロックのおかげで、チューニングすれば1000馬力以上のパワーに耐えられるタフネスさを誇った。
またピークパワーだけではなく、量産車ベースのレーシングエンジンにもかかわらず、4000~8000回転まで使える広いパワーバンドを持っていたことも、レースで活躍した要因だった。ちなみに上掲のようにR32、R33、R34のスカイラインGT-R専用エンジンだったが、ステージアのオーテックバージョン「260RS」には、RB26DETTが搭載されている。
スバル EG33
1991年に登場した、アルシオーネSVXに搭載されたエンジンで、スバルの量産車エンジンでは最大の排気量を誇る水平対向6気筒のNAエンジンの「EG33」。ジウジアーロデザインの美しいエクステリアが印象的なグランツーリスモで、今でも人気がある一台。
EG33は、4気筒のEJシリーズがベースで、EJ22とボア×ストロークが共通。ボア96.9mm、ストローク75.0mmなので、かなりショートストローク型エンジン。ビッグボアのエンジンは、燃焼効率がいいとはいえず、燃費が悪いと評された。ただ、その頃のスバルには、4WDに搭載可能な多段ATがなく、燃費が悪いのはATが4速だったことも影響している。
アルシオーネSVXは1997年まで生産され、総生産台数は5944台。2000年に登場したレガシィランカスター6にEZ36が搭載されて、スバルの水平対向6気筒が復活するが……。