紆余曲折を経て7ヶ月かけて作った学生たちによる青春の卒業制作
毎年1月に開催され、3日間で約30万人を集めるビッグイベント「東京オートサロン」。その会場内で毎年注目を浴びているのが「日本自動車大学校(以下、NATS)」ブース。学生たちの手により製作されたカスタムカーは奇抜な発想から生まれたモノや、プロのビルダーさながらのオーラを纏ったクルマまでさまざま。そんなカスタム業界の将来を担う若者たちが作る作品を楽しみにして来場する人も多いという。
が、ご存知の通り「コロナ禍」の影響で今年はイベント自体が中止。そこで今回、カスタマイズ科4班の学生たちが製作したZ33フェアレディZベースのショーネーム「S35Z」に目を向けていく。
レトロとモダンの融合をテーマに新・旧のZが持つエッセンスをMIX
2020年9月16日(日本時間)、「The NissanNext.com」にて次期型プロトモデルがお披露目された日産フェアレディZ。
掲げたテーマは「レトロとモダンの融合」。最新型のZを作るうえで違和感を出さないためには正常進化ベースがベターと判断、そこへ初期モデルのZたちが持つレトロテイストを加えようと「悪魔のZ」ことS30型を彷彿とさせるアイテムを織り交ぜ、雰囲気を作っていくという狙い。
それに見合ったベース車として指名されたのがZ33型だった。
ライト&テールで昔を演出しつつイエローボディで本家プロトをオマージュ
さっそくフロントまわりに目を向けていく。ロングノーズだったS30型の雰囲気に近づけるために、フレーム自体を加工して40センチ延長。パイプの鋼材を探してそれを溶接して組み上げていった。それに伴いホイールベースも延長。
先述の通りS30型を彷彿とさせるべく、丸目タイプの汎用ヘッドライトをチョイス。そのまわりに奢られたカバーはS30のGノーズ用を短縮加工したもの。フロントバンパーは現代風のエッセンスを加えるため、Z34用をベースに約6センチ延長、フォグ下部分はノートNISMO用移植。全体的にスポーティなフォルムに仕上げている。
S30Zのボンネットは逆開き(チルト式)。
フロントフェンダーはZ34用を移植、リヤは鉄板を使ってワンオフ。その上に奢った黒塗りのビス留めオーバーフェンダーは、Z34/Z33用の市販品を使い50ミリワイド化。サイドステップも延長した影響を受けているため、前方の丈を延ばしつつ取り付け部はZ33、下まわりはZ34用を付けたニコイチだ。
リヤバンパーはボディ取り付け部分のみZ33を使い、それより下はノートNISMO用をニコイチしつつ適宜加工して整える。リアウイングは昔のワルっぽさを演出すべく社外ダックテールを装着。リヤの顔を決めるテールランプはS30用のレプリカテールを探し、違和感なく収まるように鉄板と鉄芯を使いフレームを作成。
本家プロトタイプをオマージュした、ど目立ちイエローボディは生徒によるオールペン。マークXの特別仕様車「イエローレーベル」に使われた「アウェイクンイエロー」を使っている。そのボディカラーに合わせたホイールは「ワークエモーションZR10」のキャンディレッドをチョイス。
「車両を購入した当初、ボディカラーは白だったんです。それで赤のホイールを履いたニスモ仕様を目指していました。その後9月にプロトタイプが発表されてそれを見ていたら、(赤白の)似たような組み合わせのイメージ画もあったんですよ。それを意識と思われるのが嫌で、だったら思い切ってという事でイエローに変えました」。
改めて完成したフォルムを見ながら学生たちに感想を聞いたところ「(コロナ禍もあり)スムーズにはいきませんでしたが、そんな中でもここまで仕上げられてホッとしています。それでもやっぱり、オートサロンの舞台とその後の卒業旅行(製作車両は検査場で公認を獲得し、そのクルマで移動するのが恒例)も中止になったのがやっぱり心残り。とはいえメンバーとも仲良くできたし、自分たちで言うのも何ですが、100点をあげたいですね」。