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バイカーズ議連が視察! 青木拓磨選手も参加の「パラモトライダー体験走行会」開催

新たな障がい者の受け入れの検討も

 レーシングライダーとして世界で活躍した青木三兄弟の次男となる青木拓磨選手が、参戦するロードレース世界選手権(WGP、現MotoGP)事前テスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた。この事故をきっかけに、その兄弟の長男・青木宣篤選手と三男・治親選手のふたりが立ち上げた非営利支援団体である一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)。その活動は、拓磨選手と同じように、事故などで障がいを抱えてしまって2輪車を諦めた人に再びオートバイに乗ってもらい、オートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行けるように応援するもの。昨年6月から一般の障がい者を対象とした「パラモトライダー体験走行会」を開催している。

国会議員の超党派議員連盟「バイカーズ議連」が視察

 その2021年初の「パラモトライダー体験走行会」が3月29日、千葉県袖ケ浦市にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。今回の走行会には、5名の参加者と4名の見学者が来場するということで、ボランティアスタッフもこれまで以上に強化され、一般のボランティアスタッフ以外に日本ミシュランタイヤからも多数の応援が駆け付けることとなった。

 また、この直前となる3月23日に設立されたばかりの超党派議員連盟「バイカーズ議連」からの視察もあって、この活動の盛り上がりを見せることとなった。このバイカーズ議連とは、与野党の2輪愛好家議員によって設立されており、今回は、その会長となる自民党の大岡敏孝衆院議員、そして元モトクロスライダーで脊髄損傷の事故の後、チェアスキー選手に転身した元パラリンピック日本代表選手で、この議連の幹事長である立憲民主党の横澤高徳参院議員も参加。横澤議員は息子で、全日本モトクロスライダーである横澤拓夢選手とともに会場にやってきた。他にも元格闘家である須藤元気参議院議員らが同行。積極的に意見交換も行われた。

 明け方まで残っていた雨の影響で路面コンディションは悪かったものの、それでもウエットパッチが残る程度に午後には回復。パラモトライダー5名のうち3名は、すでにこの体験走行会への参加経験のあるライダーであり、広場でのトレーニングの後に、袖ケ浦のコースを先導付きで走行と順調にプログラムをこなし走行を楽しんだ。

 新規参加者のひとりである樋榮 聖さんは大阪在住。#777 ランドマーク&スピードテックB・M・Sレーシングの第2ライダーとして参戦した2008年鈴鹿8耐の予選セッション時にヘアピンコーナーで転倒。胸椎のT4-9の骨折 、T7の粉砕骨折でみぞおちから下からが感覚のない状況だという。

 樋榮さんは以前から海外の知人より「ハンディキャップを持っていたって乗りたいなら乗ればいい」とアドバイスを受けていたところに、拓磨選手による8耐デモランを見た。これを追い風と感じてすぐに車両の制作を行ない、SSPと同じシステムを組み込んだホンダCBR600RR(PC37)で、すでに鈴鹿サーキットでの走行を2回行なっているのだ。

 この走行を経てSSPとのつながりができ、今回参加することとなった。自身で製作した前傾姿勢のキツイCBRよりも乗りやすかった、ということで、この袖ケ浦のコースを楽しんだようだ。全国展開も目指すSSPの力強い味方になってくれそうだ。

次なるライディング補助などの開発も検討

 今回新たに、右足切断の障がいを持つ参加者も参加となった。船木勝美さんはバイク乗車中、Uターン待ちをしているところを後続車に追突される形で右足の太腿から下を切断してしまっており、義足での生活となっている。拓磨選手の鈴鹿8耐でのデモランを見て触発され、このコロナ禍でネットを見てさらにSSPを知り、個人サポーターとして加わってきた。そして昨年末のパラモトライダー体験走行会の会場に実際に足を運び、今回の参加を決めた。

 SSPでは、ハンドシステムなど下半身不随の障がい者でも乗車が可能となる補助システムを搭載したバイクを製作している。制御の利かない下半身の場合は、両腿をシートベルトで支え制御、そしてまたライディングブーツとバイクのステップをビンディングで接合。そして、停車時・走行開始時に自立しないバイクは、数多くのボランティアスタッフが支えることでライディングを可能にし、このパラモトライダー体験走行会を開催してきている。これまでは部位の違いや程度の違いはあったものの脊髄損傷によってほぼ半身不随という参加者であった。

 今回の船木さんのケースは初めてのことで、本人との調整を行ったうえで、それに合わせパーツの付け替えを行うなどしてこれに対応し、無事にコース走行を楽しむことができた。

 走行後、船木さんは「宣篤選手に先導してもらい、一緒に走っていた拓磨選手に途中抜かれましたが、青木兄弟の二人の走りをコース上で観ながら走るっていう夢の時間が持てました。今日は天気も良くてほんとに気持ちいい気候の中で楽しい走行ができました」とコメントしてくれた。

 障がいを負って、バイクで走ることを諦めてしまった元ライダーたちに、再び走る喜びを取り戻してもらおうとするこの活動。走行会会場には加齢で体幹が弱まってきており、さらに手指切断でグリップが握れないという見学者もいらっしゃった。障がいへの対応は個人個人さまざまだけに、今後どうやって応援対応をしてゆこうかも含め、宿題は山積だ。ただ、今回はバイカーズ議連の視察もあり、この活動への理解や協力の要請も行なえたこととなり、大きな進歩のひとつになるに違いない。

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