ローダウンで走行性能アップは正解でもあり誤りでもある!
スポーティなチューニング、カスタマイズでは「シャコタン」といって車高を下げることが定番中の定番になっている。何の疑問も抱かずに、とりあえず車高調サスペンションを入れて、車高を下げておけばコーナリング性能は高まる……と思っている人は少なくないかもしれない。 はたして、車高ダウン=走行性能アップという法則は成り立つのか。結論から言えば、大筋では車高ダウンは走りの安定性につながるが、必ずしもそうとはいえない部分もあるというのが正解だ。まず、市販車チューニングにおいて車高を下げる目的に空力的要件はほとんどなく、ストロークを短くして、コーナリング時のボディの傾き(ロール)を減らしたいという思いが大部分だろう。
ロールの大小は重心とロールセンターの位置関係で決まる
そもそもロールというのはどのようなメカニズムで発生する現象なのか。できるだけ単純化すると、旋回による横Gで車体を外に押し出す力がかかり、それによって重心が“ロールセンター”を軸にして回る動きのことをロールと捉えることができる。 このロジックでいえば、ロールを減らすにはロールセンターと重心位置を近づけることがポイントになるのがわかる。ならば車高を下げるということは重心が下がることになり、ロールセンターの高さが変わらないと仮定すれば、車高ダウン=ロール減となり得る。
しかし実際にはそうはいかない。なぜならロールセンターというのはサスペンションのジオメトリが変わることで変化してしまうからだ。そして、スプリングの自由長を短くするなど車高を下げるとジオメトリは大きく変わってしまう。
ここでポイントとなるのは、ジオメトリの変化によってロールセンター位置が変わってしまうことだ。
補正パーツの装着でロールセンターを矯正する
では、次にロールセンター位置の求め方を調べよう。
こちらも大雑把な説明となるが、ダブルウィッシュボーンの場合でいうと、上下サスペンションアームを延長した交差点とタイヤ接地面の中心をつなぐ線を左右に引き、その線が交差したポイントがロールセンターとなる。
ここで注目したいのはローダウンによってサスペンションジオメトリが変化することで、ロールセンター位置が下がってしまうことがあるということだ。もし、重心位置が下がった以上にロールセンターが下がると、重心からロールセンターを引いた距離(ロールモーメントアーム)が長くなってしまう。すなわちロールが大きくなってしまうのだ。 実際には、車高ダウンというのはスプリングのバネレートを高くしているので、同じ荷重がかかったときのストローク量が変わることもありロールモーメントアームだけで話をすることはできないのだが、適切なローダウンをしたいのであればロールセンターの位置を適正化することを忘れるわけにはいかない。
そこで登場するチューニングパーツが「ロールセンターアジャスター」などと呼ばれるものだ。
ストラット向けのロールセンターアジャスターは、多くが厚めのシムのようなシンプルな形状となっていることが多い。このパーツをロアアームとハブキャリアの間にはめ込むことでアームの角度を調整することができ、それによってロールセンターの位置を変化させることができる。
これにより車高ダウンをしつつ、ロールモーメントアームの最適化が可能になるというわけだ。