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GT-Rの復刻パーツに手が出せない! 値上げせざるを得ない4つの理由

製造廃止の純正部品復活は苦労の連続

 2017年からニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(以下ニスモ)が展開している「ニスモ・ヘリテージ」。R32スカイラインGT-R向けから始まった純正部品の復刻やリプレイス品販売、そして修理は、それまで製造廃止に悩まされたオーナーの救世主となった。

 しかし「値段が高過ぎる!」「純正部品を高く売るための策ではないか」などの不満が噴出しているのも事実だ。実際はやむにやまれぬ事情がある。その理由について探ってみた。

30年程前のモデルは人気だがオーナーは経年劣化で苦しむ

 ここ最近、1990年前後に作られたクルマたちが注目を集めている。この時期以降、明らかにクルマの作り方が変わり、大枠では20世紀のクルマ作りから21世紀型のクルマ作りになったと言えるだろう。

 わかりやすいところでは、手書きの図面からCADデータに変わったこと。クルマを作る上で、テストドライバーの経験値や感性を頼りにしていた時代から、さまざまな解析技術やシミュレーション技術が進化し効率的なクルマ作りが可能になったことなどが挙げられる。

 こうした点を踏まえると、20世紀のクルマたちには人間的な血の通ったような乗り味があるのかもしれない。だからこそ、今、あの時代のクルマたちを大切に乗り続けようとする人が多いのもうなずける話である。

 しかし、発売から30年以上も経過していれば、愛車を維持するために必要な純正部品の供給も途絶えていることが多い。日本の自動車メーカーの場合、概ねそのクルマの生産中止から10年を目処に、純正部品の供給も終了することが多い。

 理由は、部品も売れなくなるからだ。

当時のクルマを甦らせる純正パーツの復刻

 ところが前述の通り、1990年前後に登場したクルマの人気が高く、スカイラインGT-Rやシルビア、RX-7など、一部車種については新車時の価格を大幅に上回る値段で取引されている中古車も多い。となれば、純正部品の供給を求める声も大きくなる。こうした現代の風潮に対し、自動車メーカーあるいはその参加の子会社がかつての純正部品を復刻する動きが数年前あたりから目立つようになってきた。

 その筆頭が「日産自動車」と子会社の「ニスモ」がタッグを組んだ、ニスモ・ヘリテージパーツだ。日産ディーラーで普通に手に入れられる部品として供給している。

  現代でも人気のR32スカイラインGT-Rの純正パーツの復刻にはじまり、現在はR33、R34と3世代のGT-Rを対象に純正復刻のパーツ、代替品として作るリプレイス品、そしてアテーサE-TSなどの修理という3部門を展開。その数は現時点で200点以上に上る。近年、純正部品の製造廃止に悩まされていたGT-Rオーナーにとっては、まことに歓迎すべき動きと言えるのではないか。

 しかしながら、これら「ニスモ・ヘリテージパーツ」の中には、純正部品時代の価格から高くなったもの多いのも事実だ。こうした点を不満に思っているオーナーも多いとう。

 なぜ、高くなってしまったのか。その理由を探ってみた。

 

ニスモヘリテージパーツが高くなる4つの理由

 理由その1。そもそも復刻したパーツの売れる数が、現役時代に比べて圧倒的に少ない。クルマが現役の時代は、数万、あるいは数十万単位のオーダーで部品供給メーカーに発注が行っていたが、復刻パーツでは、せいぜい10個、20個単位のオーダーとなっている。そのため、一つ一つを作る単価が上がっている。

 理由その2。現代の効率的なモノ作りの時代、かつての部品供給メーカーも現行モデルの部品生産を優先する。そもそも作りたくないところを無理にお願いしているという現状がある。部品メーカーからすれば、10個20個の部品を作るために量産のラインと止めるわけにはいかない。仮に止めたとしても現在進行形の部品に不具合が発生する可能性が高い。となれば、試作対応となるが、この場合、当然コストは高くなる。

 理由その3。30年以上前の部品は、現代では設備や機材がなくなってしまったため、同じものがそもそも作れない。この場合、現代の技術で同じ機能のパーツをイチから作るため、新規開発に近くなりコストがかかる。

 理由その4。そもそも車両の発売時、OEMメーカーとパーツ価格の取り決めをする。その契約年数が決まっており、それ以降も作るとなると、改めて価格交渉が必要になる。GT-Rに限って言えば、その契約が切れる時期がここ数年に集中しており、当時の価格では作ってもらえなくなっている。

 さらに、内装素材などは当時と同じ素材が現在の法規準では作れないため、現在の素材で作るしかない。そもそも、当時のパーツメーカー自体がなくなってしまったので、他のメーカーに依頼するしかない。当時のメーカーは存在しているが、今は当時のような部位の部品は作っていない(例えば当時はショックアブソーバーを供給していたが、現在は製造を行なっていないなど)。純正部品を復刻させるためには大きな壁が立ち塞がっていることが多い。

 以上のような理由で、価格が上がってしまうという。

どんなに高くてもパーツがあるだけ幸せだ!

 重要なのは、ニスモ・ヘリテージパーツについては、日産自動車とニスモのコラボなので、純正品と同等の安全基準を満たしている点だ。そのため、新規メーカー、あるいは現在の技術で同じ機能のモノを作った場合も、当時と同じ安全確認のための実験を行っている。この点、コストは相当かけていると言わざるを得ない。

 ちなみに、部品供給メーカーによっては少量の発注では作ってもらえないため、ニスモで在庫を抱えて先方が納得する量を発注している部品もあるという。

 また、販売価格があまりに高くなってしまうが、クルマを維持する上でどうしても必要な部品については、赤字を覚悟で販売している部品もあるそうだ。

 世の中には、純正部品の供給が途絶えて途方に暮れるクルマが多い。スカイラインGT-Rのように、日産自動車とニスモが純正部品を復刻してくれるクルマのオーナーはかなり恵まれているというほかない。お金さえ払えば部品は手に入るのだから。

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