展示場所は早い者勝ち! 走り回るのもOK
では、参加者はどのように楽しむのか。もう自由に勝手に、といったところだ。町の中で展示場所や駐車スペースが決まっているかといえば逆。パスさえ持っていれば好きなところに駐車していいよ、というワケだ。だからメインストリートは早い者勝ちで早朝からベストポジションを目指したクルマがやってくる。ただおもしろいクルマを見たい人、イベントを楽しみたいだけのグループはのんびり昼くらいから会場入り。パスを持っていなければ、町の外側にクルマを止めて歩いてやってくる。そして暗くなるまでバカ騒ぎ。そのどちらも間違ってはいない。楽しみたいように楽しめばいい。それがヴェルターゼーツアーなのだ。自動車の歴史が古いヨーロッパだからこそカスタマイズに対しても寛大だ。
展示車両を歩きながら見て回るのもいい。ライフニッツの町は緑豊かで、いかにもなヨーロッパの避暑地だからブラブラするだけでも楽しい。そのあちらこちらにコダワリ満点の車両が置いてあるから、初めて訪れる人は異様な風景が楽しいだろう。駐車場だけでなく歩道や民家の庭先にところ構わずクルマが止まっている。
また、疲れたらメインストリートの脇に陣取って、ボーッと座っていればいい。目の前をカッコよく仕上げた(あるいは理解不能なまでにイジリ倒した)クルマがゆっくりと列をなして通り過ぎてゆくのだから。
カスタマイズの方法は十人十色、千差万別。すっきりと正統派がいると思えば、その隣にはボディ全体に革張りを施したクルマがいたり、いわゆるガルウイングを開けっぱなしで走り回っているゴルフがいたりもする。ゴルフIがいるかと思えば、最新のアウディがサラリと路駐して展示していたりもする。レアなモデルやベースが何かわからないモノまで走っている。
自分がカッコよく仕上げた愛車を見てもらいたいという気持ちは世界共通であり、その趣向が違ったとしてもお互いに認め合えるのがヴェルターゼーの空気感だ。
自動車メーカーまでもが大規模ブース出展
そして驚くべきことに、ある意味カオスと化している同イベントにVWやアウディが大規模なブースを出展することもあるということだ。まるで有名なモーターショー並みの凝り方であり、ヨーロッパの自動車文化の奥深さを感じる。自動車メーカーや地方自治体がドレスアップしたオフ会に全面的に協力するなんて、日本ではあり得ないだろう。
カスタムの最先端がある、とは言えない。日本やアメリカのカスタマイズ文化もかなり進んでいる。しかし、「とにかく目立ちたい」とか「自分がカッコいいと思うスタイルを見てもらいたい」という意識が強いのは確か。そしてクルマやカスタマイズを楽しもうという気概はとにかく強い。
最後に、もしヴェルターゼーツアーに行くことがあったら、一つの合い言葉を覚えておいてほしい。
「グミグミ~!」周囲が盛り上がっていたら、乗っているのがレンタカーだとしてもバーンアウト(静止状態でタイヤを空転させる)して白煙をモクモクと出し、期待に沿わなければならない。とにかく「ノリ」なのである。だから、初心者はまずは町の外にクルマを置いて、歩いて会場入りをオススメする。ちなみに近隣の町からは「パーティ船」と呼ばれる、音楽ガンガンに盛り上がった船でアプローチも可能である。