日本人オーナーチームHREはここでも上位争いを展開
アメリカでもっとも人気のある自動車レース「NASCAR(ナスカー)」の3大カテゴリーとして、「カップ」、「Xfinity(エクスフィニティ)」とともに挙げられる「Camping World Truck(トラック)」シリーズで、2018シーズンのタイトルを獲得したこともあるHATTORI RACING ENTERPRISES (HRE)は、このナスカーの世界で唯一の日本人チームオーナーである服部茂章代表が率いるチーム。今季もこのトラック・シリーズに、オースティン・ヒル選手を起用しゼッケン16を付けたトヨタ・タンドラを走らせている。
オーバルコースがダート路面に変貌
ブリストルのコースは、1周0.533マイル(858m)というショート・オーバルのコース。ストレートは198mで、その2本のストレートをつなぐ2つのターンには最大28度の深いバンク角が付けられている。もちろん路面はコンクリート舗装されているのだが、今回はそこになんとダートを敷き詰めたダート・オーバルコースにしての興行ムードを高めた特別開催となった。ただでさえ滑りやすいコンクリート路面から、さらに滑りやすいダート路面となっていることもあり、レースはクラッシュが頻発する荒れた展開となっていった。
ナスカーではレースにもよるが、このコロナ禍で練習および予選セッションのない特別なレースフォーマットを採用するレースが多いが、今回は特設コースでのレースということもあり、フリー走行や予選セッションも行われた。
レース・スタートまで紆余曲折あり
26日(金)に行われた練習走行、各チームともダートコースに合わせたセッティングを詰めていきたいところだが、走行ラインのダートは剥げ落ちていき、下地のコンクリート路面がところどころ出始め、そのコンクリート路面がさらにグリップを奪うという難しい状況を生んでいた。HREの#16 United Rentals TOYOPET TOYOTA TUNDRA」はトップから0.27秒遅れの僅差ながら19番手でこのセッションを終えた。
翌27日(土)は、4組に分かれての15周の予選レースという展開でスケジュールは進行していく。前夜からの雨によりぬかるんだ土が、乾いてゆくのを待って1時間遅れでヒル選手は1組目の予選レースに臨んだ。だが、湿気を含んで巻き上げられた泥が各車のフロントウインドウに付着し前方の視界不良という状況が襲う。直ぐに赤旗中断されるが、雨も降り出したことから予選レースは中止となり、当初その後に予定されていた決勝も翌日に延期となってしまう。これにより予選がなくなったことで、決勝のスタートグリッドはシリーズランキング順の抽選により決められることとなり、HREの16号車は2番手スタートに決まった。
28日(日)に順延された決勝レースは、天候が回復しなかったことから再延期となり、29日(月)の午後12時にようやくグリーンフラッグが振られる。コース150周(75マイル)を、第1ステージ40周、第2ステージ50周、そして第3ステージ60周で争う、シリーズ第5戦「Pinty’s Truck Race on Dirt」はスタートしていった。
オーバルコースのスリッピーなバトル
フロントロウのアウト側からスタートしたヒル選手の16号車は、序盤からトップ3台による拮抗した争いを展開。レースは12周目、27周目、31周目と立て続けてイエローコーションが出される荒れ模様。ヒル選手は6番手で第1ステージのチェッカーを受けた。
通常なら走行を重ねたままステージブレイクを経て、第2ステージへのリスタートを迎えるわけだが、今回は、赤旗中断による全チーム一定時間でのピット作業というステージブレイクの特別ルールとなり、ピットクルーによるピット作業時間短縮でのポジションアップという展開はない。
このため16号車は6番手から第2ステージを開始、43周目にリスタートとなった。この第2ステージも荒れた展開となり、途中赤旗中断もあり、79周目に起きた8回目のイエローコーション明けのリスタートでは16号車は再び3番手にまでポジションを回復して90周目の第2ステージのチェッカーを受ける。
ダートレース経験の少ないヒル選手は難局を乗り越えながらクレバーに走り切り9位。3ステージとも確実にポイントを積み上げた。