キャンピングカーといえば「キャブコン」
キャンピングカーのファンにとって、やはり一番の憬れはキャブコンバージョン、通称「キャブコン」だろう。バスやトラック、ワンボックス車などをベースに、キャブ(運転席部分)を残し、車体後部に居住空間となるキャビンを架装したタイプで、車内にはリビングやキッチン、ベッドなどが常設してあり、極めて快適なクルマ旅が楽しめるのが魅力。本場の欧米でも人気が高い、まさにキャンピングカーの代名詞だ。
そんなキャブコンも、近年のキャンピングカー・ブームに後押しされてか、快適性や居住性などに著しい進化が見られている。幕張メッセで開催されたジャパンキャンピングカーショー2021(4月2日~4日)にも、各メーカーから最新のモデルが数多く展示されたが、ここでは、中でも特に注目の最新キャブコンを紹介しよう。
ズバ抜けた充電ユニットで連泊もご満悦【ナッツRV・ボーダーバンクス】
ナッツRVが誇る最上級キャブコンがボーダーバンクス。その2021年ニューモデルが「ボーダーバンクス・ハイパーエボリューション」だ。 2007年の初期型から14年以上もの長い間生産されているこのモデルは、いつかは乗りたいキャンピングカーのNO.1にも選ばれた実績を誇るロングセラー車だ。幾度かの改良が施され現在に至った新作では、ベース車両に24年ぶりのフルモデルチェンジが行われたトヨタのマイクロバス「コースター」を採用する。 ボディサイズは全長6255mm×全幅2230mm×全高3020mmで、そのフォルムは欧米製キャンピングカーを凌駕するほどの迫力や高級感を持つ。広々とした室内には、ロングソファーも置けるリビング(タイプLの場合)や清潔感溢れるキッチンなどを装備。前方上部には1580mm×2020mmの広いバンクベッド部、後部の常設ベッドルームには1400mm×2020mmのダブルベッドや家庭用エアコンも搭載し、上質でゆとりある居住空間を実現。乗車定員6~7名乗車、就寝人数は5~6名(グレードで異なる)だ。 そんな新型の一番の注目点は、新しい急速充電システム「ハイパーエボリューション」の搭載だ。従来から同モデルには、エボリューションと名付けられた急速充電システムを採用していた。特徴は、独自開発したインバータ充電などの装備により、搭載する4つのサブバッテリーへの満充電が、昇圧充電によりアイドリングでも約4~5時間で可能なことにある。従来システムでは12時間ほど必要だった充電時間を飛躍的に短くしたことだ(充電時間は使用条件などで変わる)。 新システムでは、それをベースに、昇圧充電がより進化した新開発の急速充電ユニットを採用し、充電時間をさらに短縮することに成功した。アイドリングでも約3~4時間で4個のサブバッテリーを満充電することを可能にしている。
これにより、真夏の夜間にエンジンを停止してエアコンを朝まで使用しても、走行やアイドリングですぐに充電ができるため、キャンプの連泊も可能。また、外部電源の設備がないキャンプ場の宿泊などでも、自車で十分に電力を賄えるため、場所を選ばずアウトドアを満喫できる。 さらに、サブバッテリーには軽量で安全性が高いリン酸鉄リチウムイオンタイプを採用したほか、バッテリー本体のBMS(バッテリーマネジメントシステム)とシステムユニットの充電管理システムがダブルでバッテリー充電を制御。バッテリーの寿命を延ばす「80%充電」と、出先でより電力が必要な場合の「100%充電」といった充電方式の切り替え機能などにより、バッテリーの安全性や耐久性の向上も実現している。 なお、新型ボーダーバンクスの価格(税込)は、従来のエボリューション仕様が1489万4000円、ハイパーエボリューション仕様が1577万4000円。室内レイアウトによりL、D、Tといった3タイプを用意している。
広がる運転視界と就寝スペースで前後ともゆったり【ファンルーチェ・ヨセミテ】
キャンピングカーランドのブランド、ファンルーチェの新型キャブコンが「ヨセミテ」だ。参考出品のため価格などはまだ未定だが、新型では仕事を引退した高齢者などが、夫婦2人でのんびりとクルマ旅を楽しむことをコンセプトに開発されている。 車体には、トヨタのキャンピングカー専用ベース車で、トラックの「ダイナ」などのシャーシを使ったカムロードを採用。ボディサイズは全長5225mm×全幅2040mm×全高2830mmだ。
また、1900mmもの高い室内高を持つリビングには、ロングソファなどを設置したダイネットや、シャワー室やトイレなどに使えるマルチルームを装備。キッチンには、コーヒーメーカーをプルダウンで出し入れできる収納棚も採用するなどで、使い勝手も良好だ。 このモデルで注目なのは、架装したキャビン前方、運転席上にあるバンクベッド部が通常のキャブコンのように突出していないことだ。前述の通り、2人旅をコンセプトとしたこのモデルでは、車内後方に設置したセミダブルサイズのウッドスプリング大型ベッドがメインの就寝スペースとなる。ここに大人2名がゆったりと就寝できるため、車内前方のバンクベッド部は比較的小さくし、大人1名やお孫さんなど小さな子供が橫になれる程度のスペースとしている。 その分、室内が広くできるほか、運転席上のキャビンがせり出さないため、走行中に風の影響を受けにくく、安定した走りが可能となる。また、運転中に上方のバンクベッド部が見えないため、視界がより広く感じるといったメリットも生み出している。
ちなみに、リヤベッド下には1350mm×1350mm、高さ1350mmといった大型ラゲッジも確保し、キャンプ道具など様々な荷物の収納が可能だ。荷物の出し入れは、車体外側のドアからできるほか、ベッドを跳ね上げれば室内からもアクセスできるため、使い勝手も良好だ。