遡上の鮭のような「GT-R中古部品」の実態
その業者は、まず程度がいい中古の第2世代GT-Rを手に入れる。その個体の程度のいい部品をすべて剥ぎ取り、ボロボロの純正部品(あるいは社外品)に付け替える。外した程度のいい部品はネットオークションで販売し、ボロボロの部品を取り付けられたGT-Rは再び市場に流される。これが「逆コンプリートカー」の仕組みである。取材当時はまだ第2世代GT-Rの中古車が程度の悪い個体は100万〜200万円だったからまだ良かったものの、R32クラスでも程度が悪い個体でも軒並み100万円以上値上がりしている。状態もよくなく車両価格も高いのだから、買い手にはメリットはない。
件の業者によると「数年後程度のいいGT-Rを仕入れたら以前制作した逆コンプリートカーで、新品部品をたくさん装着して戻ってきたのには驚きました」と語る。そんな、産卵期の鮭の遡上みたいなことがあり得るのかと驚いた。
前述の業者は「業者オークションに出品される第2世代GT-Rの事故車は、どんな高値でも落札し、市場に流通しないようにしています」と語る。最近、ネットオークションでも第2世代GT-Rの部品取り車(または事故車)を見かけなくなったのは、こういうことだったのだ。
また、これを読んだ読者が「自分も始めてみよう」と思っても、相当ハードルが高いビジネスということでもある。取材を行った業者は5年以上前からこのビジネスを行っており、新規参入するには現在流通している車両が高すぎる。
だが、このような業者のおかげで市場に多くの中古部品が出回っているのもまた事実である。オーナーにとってはありがたいことではあるのだ。たとえ中古部品の値段が高くとも、とりあえず修理することはできるのだから。
「Rの中古部品」の現状を打破する方法はあるか
まとめよう。GT-Rの車両価格が高い、そして純正中古部品が高い根本的な原因は以下の通りだ。
①GT-Rはボロボロでも価値がある
②第2世代GT-Rオーナーは値段が高い部品でも良いモノなら購入してくれる
③製造廃止された新品純正部品が多い
④新品純正部品の価格が高い(値下げされたことがない)
日産純正部品(あるいはヘリテージパーツ)の値段が大幅に下がらないと、この「GT-R純正中古部品バブル」は、当分収束することはない。厳密に計算はしていないが、こと部品代においては既にポルシェ、フェラーリのような「スーパーカー」の領域に踏み込んでいると思われる。
では、オーナー予備軍がこれから第2世代GT-Rの中古車を選ぶべきポイントとは何だろうか?