Z32にはオンリーワンの魅力が多い
バブル経済真っ盛りの1989年に登場したZ32型・4代目日産フェアレディZ。2000年まで生産が続けられ、現行Z34型(6代目)に次ぐ長寿モデルとなったこのZ32は、程度の良いターボMT車であれば中古車の相場が新車価格並みにまで上昇している。そんなZ32の何がクルマ好きを魅了するのだろうか?
その答えは、幾万の言葉よりもずっと雄弁に、一枚の写真が語ってくれるだろう。発売から32年が経過した今見てもなお斬新かつ色あせない、このエクステリアにある。
フェアレディZの中で唯一のスラントノーズ
歴代フェアレディZは初代S30型から現行Z34型までロングノーズ・ショートデッキの、FRスポーツカーの文法通りと言うべきプロポーションを採用してきた。ただしこのZ32だけは唯一の例外で、従来とは真逆のワイド&ローのプロポーションと低く短いフロントフード、60度の超スラントヘッドランプなど、ミッドシップスポーツカーと見紛うばかりのデザインが与えられた。
ヘッドランプはスーパーカーにも流用された
なお、このヘッドランプはのちに、日産R390ロードカーやランボルギーニ・ディアブロの後期モデルに採用されている。かたやル・マン参戦マシン、かたやイタリアを代表するスーパースポーツだが、いずれもミッドシップカーだったというのも、いかにZ32のスタイルがミッドシップスポーツカー(スーパーカー)的だったかをうかがわせる逸話だろう。
国産車280ps自主規制が適用された最初のモデル
ボディタイプはデビュー当初、ホイールベース2450mmの2シータークーペと同Tバールーフ、ホイールベース2570mmの2by2・Tバールーフの3種類だったが、1992年に2シーターをベースとしたオープン仕様「コンバーチブル」が追加された。
エンジンは2種類が用意された
走りに関しても、当時の日産が持つ最新技術が惜しみなく投入されている。エンジンはその特徴的なノーズ形状を実現するためVG30型3.0LV6に一本化されたが、230ps&27.8kg-mを発するDOHC自然吸気のVG30DE型と、280ps&39.6kg-mを発するDOHCツインターボのVG30DETT型の2種類が用意された。なお後者の輸出仕様は300psで、Z32は2004年まで続く国産車280ps自主規制が適用された最初のモデルになった。
高速道路をゆったりと走る方がむしろ適していた
……と言いたい所だが、実際の走りはスポーツカーというよりもGTのそれで、サーキットやワインディングで限界までコーナーを攻めるよりも、高速道路をゆったりと走る方がむしろ適していた。また、特徴的なスラントノーズのおかげで、特にツインターボ車はエンジンルーム内の空間に全く余裕がなく、しかもエンジンフードに開口部はなくバンパーの開口部も小さかったため、高負荷走行が続くと熱ダレしやすいという設計上の弱点も抱えていた。