ポルシェを観るならこの2つの博物館がお奨め
偉大なるポルシェの博物館として、ひとつは本家本元の企業博物館がまずは訪れたいところです。が、さらにもうひとつ、ポルシェならではの関わりがあるプライベートな博物館があります。そこにはやはり歴史的振り返りに不可欠なものも宿っているのです。というわけで、ポルシェといえばこのふたつの博物館を紹介したいと思います。
ポルシェの城塞都市シュトゥットガルトと愛あふれる田舎町グミュントへ
ドイツはシュトゥットガルト郊外、ツッフェンハウゼンの本社工場に併設され、当然ながら“本家本元”と位置づけられているのがポルシェ博物館(Porsche Museum)です。
以前、フェラーリに関する博物館を紹介した時に、マラネッロの本社に併設されていて“本家本元”と位置づけられているムゼオ ・フェラーリ・マラネッロ(Museo Ferrari Maranello)と、それに対を成しているムゼオ・カーサ・エンツォ・フェラーリ・モデナ(Mef-Museo Casa Enzo Ferrari – Modena)を合わせて紹介したことがありました。フェラーリで紹介したふたつは、ともにフェラーリが運営する企業博物館ですが、運営のコンセプトが違っていることで差別化が図られていました。
今回紹介する2つのポルシェ博物館は、“本家本元”と位置づけられている前者は紛れもなくポルシェの企業博物館なのですが、グミュントにあるポルシェ博物館は、あくまでもプライベートな博物館に過ぎません。それでは何故、“本家本元”と並び称されているのでしょうか?
建造物そのものが突出したモノリスのシュトゥットガルト
シュトゥットガルト郊外、ツッフェンハウゼンに現在のポルシェ博物館が完成したのは2009年のこと。2005年に建設工事が始まったビルは、今ではシュトゥットガルトの街のベンチマークになっています。公式HPでは『宙に浮いたモノリスのような……』と形容されていますが、この建物自体が特徴的な佇まいを見せています。
こうしてたどり着いた“モノリス”の内部、展示スペースは変則的な2層式になっていて、ポルシェに関するさまざまなモデルが展示されています。ここでしか見ることができないモデルとしては、19世紀末にポルシェ博士が初めて手掛けたエッガー-ローナーの電気自動車や
ロードゴーイングカーだけでなくレーシングカー…ドイツ語で言うならレンシュポルトも数多く展示されています。
といったスポーツカーレースで活躍したクルマに交じって、珍しいところでは60年代のF1GPで活躍したポルシェTyp 804も展示されていました。
個人的には小排気量ながらエンジンチューニングを進めるとともに軽量化を追求、大排気量車をカモにしていたTyp 909 ベルクスパイダー(Bergspyder)がポルシェらしくて一押しです。
第2次世界大戦中にポルシェを支えたゆかりの町
さて、続いてはグミュントのポルシェ博物館。先に、グミュントという町と博物館オーナーのプパイフォーファーさんが歴史的にポルシェと深い関りがある、としましたが、まずはその辺りから解説していきましょう。
オーストリアの片田舎にあるグミュントは、じつは第2次世界大戦中に、ポルシェ社が戦禍を避けてやってきた疎開地だったのです。そして、ポルシェ博士が戦犯として幽閉されている間に、息子であるフェリーがポルシェ356を設計したのもグミュントに疎開中のこと。もちろん、初期の356はこの地で生産されています。
そんな経緯でオープンすることになったグミュントのポルシェ博物館ですが、収蔵展示物もかかわりのある逸品が揃っています。その筆頭はポルシェ356を製作する際に使用された木型であり、その木型を使って叩き出されたアルミニウムボディを纏うポルシェ356ALU(Aluminium Karosserie)です。
また356を生み出すベースとなったフォルクスワーゲン(VW)のタイプ1、いわゆるビートルのシャーシ(フロアユニットにエンジン/ミッション/デフと前後のサスペンションを組付けたもの)も展示されていて、ここから356のイメージが膨らんできたのだと実感させられます。
またVWをベースにした356のユニットから911用のフラット6まで、各種のエンジンが勢揃いしている様は圧巻です。
レーシングカーとしては
ポルシェ935
ポルシェ911のパトロールカーも見逃せませんね。
足をちょいと伸ばせばメルセデス・ベンツやBMWの博物館へも
シュトゥットガルトへのアクセスは、日本からの直行便も数多いフランクフルト空港からは南に200㎞弱。アウトバーンのA5もしくはA6を使って2時間弱。シュトゥットガルトには、市街地の北東部にあるポルシェ博物館に加えて市街地の南東部にはメルセデス・ベンツ博物館もあって、双方は10㎞足らずの距離にあるので午前と午後でドイツを代表する2つの博物館をめぐることも可能です。
ちなみに、シュトゥットガルトから東に230㎞ほど進むとBMW博物館のあるミュンヘンがあります。