GT-R NISMOで筑波サーキットを速く走るためのポイントは?
ところが、である。いざ筑波サーキットにコースインすると「1分は切れないかも」と不安になってきた。筑波サーキットは特殊なレイアウトだ。例えば鈴鹿サーキットのように旋回力でタイムを稼ぐコースではなく、ステアリングを切りながら加減速を繰り返す過酷な構成である。ところが、GT-R NISMO 2020年モデルが大きく進化したのは、まさしく「旋回力」なのだ。 では、筑波サーキットで1分を切るためにはどうしたらいいのか? まずは眼を慣らすこと。このスピード域では強烈な加減速のおかげで、景色が歪む。1ヘアピンを立ち上がり、ダンロップコーナーを見ようにも眼の焦点が合わないのだ。そのため適切なタイミングでステアリングを切れず、レコードラインに載せることができない。いつも強烈なGを体験し眼が鍛えられている現役ドライバーとの差は、ここにある。
目指すべきポイントを見据え、タイヤの通るラインを意識する。1分の壁をぶち破るためには80Rを全開で抜ける必要があり、フロントタイヤが芝生に落ちるギリギリを攻めなければならない。まさに針の穴を通すような正確なステアリング捌きが要求される。
タイヤを滑らせながら限界まで攻め切れるかがタイムアップの鍵
眼が慣れてきたところで、徐々にGT-R NISMOの性能がわかってくる。どれだけ強烈にブレーキを掛けステアリングを切り込んでも、旋回しながら加速しても、タイヤはもちろん滑るが、ボディを含めて各部がよれない。これが2020年モデルの強みである。
タイヤ、ホイール、サスペンション、ボディ、すべてがレーシングカーのようにソリッドで、いつ何時もコントロール下における。どこかがよれると、意図せぬタイヤのスライドや、滑りながらのコントロールができない。結果、アクセルを踏むことができなくなる。
GT−R NISMOで筑波サーキットを1分切るためには、タイヤが滑ることを前提にコントロール性のよさを活かして攻め切れるか、がキモだった。
あのときの走りは、グリップしていたときのほうが少ない。絶えず4輪が滑っているのだが、それを強靭でしなやかなボディと、冷静にクルマをコントロールする精神力で抑え込んだ。
その結果が、59秒712だ。