購入希望者が気になる「給電」のための設備投資の中身
政府が推し進める「2030年代までに脱ガソリン車」を目指すという計画。よって今後は高齢ドライバーにもEVが普及していくと思われる。そこで気になるのが「家庭インフラ」について。給電施設はどうやって設置し、どのくらい費用がかかるのか。今回、それらの事情に詳しい自動車ライターに解説して貰った。
「EV」でできる事を改めて振り返る
電気自動車(EV)のリチウムイオンバッテリーだが、例えば日産リーフの標準車は40kWh(キロ・ワット・アワー)、より航続距離の長いe+(イー・プラス)で62kWhの電力を蓄えられるものが車載されている。
この電力量だが、一般的な家庭が一日で使用する電力を仮に約18kWhとすると、正味2~3日分に相当するといえる。ただし家庭での電力使用量は季節によって幅がある。冷暖房機器をあまり使わずに済む春や秋は半分以下となる可能性もあることから、日産では3~4日分相当の電力量を車載していると謳っている。いずれにしても、かなり大容量の電力を車載することで、リーフはWLTCで322~458kmの一充電走行距離を実現しているのである。
設備導入に必要な費用と自治体の補助金
EVから家庭へ電気を供給する(VtoH)には「パワーステーション」と呼ばれる機器の設置が必要だ。機器の価格は現在、ニチコン製で39万8000円〜となっており、そこに別途設置工事費用がかかる。機器の大きさは、幅が約80cm、奥行きが40cm弱、高さが約85cmで、駐車場のある家の側面に設置する。そしてEVの急速充電口にケーブルをつなげ、ここから自宅へ給電する。逆に、急速充電することも可能だ。
設置費用は掛かるが、これに夜間電力の割引契約をあわせると、毎月2万7000円~4万円程度の電気代の節約を見込めるという(東京電力~関西電力の試算)。夜間電力の割引契約をすると、逆に日中に使う電気代は割高になるが、日中はEVに充電しておいた電気を使えば、割引された夜間電力料金で昼も使えることになる。
駐車しているときにも役に立つEVの利点を活用し、電気代の節約や脱炭素の取り組みを個人が自宅でやりやすくできるだけでなく、VtoHは台風など甚大な自然災害で停電が起きた際も、電気のある生活を数日間続けることができるようになる。スマートフォンひとつ充電できないと不安になる現代の暮らしにとって安心材料になるだろう。