バブル経済まっただ中に現れた名車とカスタム文化
1980年代の後半、日産は当時上級セグメント車であった「セドリック/グロリア」のさらなる上位モデルとして高級車「シーマ」を市場に投入してきた。一目でわかるフォルムはそれまでのセドグロが持っていた角ばったものから流麗な曲線美へと転換され、3ナンバーオンリーの車種として、自らの車格を誇示していった。
『シーマ現象』の立役者マシン「IMPUL 731S」がモデル復活
世に言う『シーマ現象』の時勢に、火に油をそそぐように登場したのが「IMPUL 731S」でもあった。『日本一速い男』の異名を持つ日産ワークスのレーシングドライバー星野一義が、二足の草鞋として立ち上げたビジネスブランドの「IMPUL」は、やはり日本一高級な車であるシーマであれば、どうカスタマイズしていくべきなのかを見せつけた。731Sは高級車シーマを高性能カスタムカーとし、エアロパーツをまとわせてホイールで足元を整えて、さらなる高みへと押し上げていったのだ。
この731Sの佇まいは、中高年高所得者のみならず、上級志向を目指そうという若者たちにも衝撃を与え、いわゆる自動車カスタム文化を活性化させる「VIPカー」カスタムの礎ともなっていった。
華麗にして強靭な心臓と足まわりを持つシーマは、最高速はもとより、それどころか走り出す姿に「おお、なんというクルマ!」と、見たもの誰もが歓喜を覚えていた。タイプIIリミテッドに組み込まれていたリヤのセミトレーリングアームとエアサスペンションの共演により、テールが一瞬沈み込みトラクションをかけてゆくトルクフルな初期作動の様が、これほどあがめたてまつられたクルマはシーマしかないだろう。
そのIMPUL 731Sの1/24スケールのプラモデルが青島文化教材社から発売されている。リヤのエアロパーツ、メッシュホイール、派手すぎず淑やかだが秘められた力がにじむ渋さがある、IMPUL風が再現されている。価格は3,080円(税込)。