ドリキン土屋圭市がGRヤリス/クスコGRヤリス/ヤリスを乗り比べ
トヨタが作った本気のスポーツカー「GRヤリス」。モータースポーツで得られた知見を市販車に活かすという「逆転の発想」で作られたモデルだ。では、実際にどれほどの実力を持つのか? 「ドリキン」の愛称で親しまれるドライバー土屋圭市が筑波サーキットで実力をテスト。今回はGRヤリスのほかに、ベースモデルのヤリス(グレードはZ、6速MTモデル)、ラリーの名門「キャロッセ」がチューニングを施した「クスコGRヤリス」を持ち込んだ。以下、土屋圭市によるインプレッションをお伝えしよう。
初出:GRマガジン vol.05
GRヤリスが優れるのはベースモデルの良さにあり
筑波で3台のヤリスを乗り比べてビックリした。ジャンルこそ異なるが、かつて日産R32スカイラインGT-Rが世に出た時のような衝撃で、最近のトヨタは根本的にクルマづくりが変わったことをあらためて強く実感させられた。
ヤリスの基本性能の高さは、ノーマルのヤリス「Z」の段階でハイレベルであることがわかる。3気筒NA1・5ℓのFFながら、サーキットでもベーシックなコンパクトカーとは思えない次元の高い走りが楽しむことができた。素性の良さのポイントは高剛性ボディとサスペンションにあるわけだが、このクラスで4輪にしっかり荷重させてすべてのタイヤに仕事をさせるクルマは稀有な存在だ。世界的にFFのコンパクトカーは前輪への依存度が極めて高いのだがヤリスは違う。後輪にもしっかり仕事をさせているので接地性が高まり、タイヤのポテンシャルを最大限に使い尽くすことができるのだ。
見た目はファミリー向けの実用コンパクトながら、中身は完全にスポーツモデルといっていい。国内市場でも車名はヴィッツではなくなったが、本当の意味でこれはもはやヴィッツではないね。さらには、素のヤリスにMTを残したところも素晴らしい。利便性や速さでは2ペダルの方が断然有利なのは明らかだし、このクラスでMTを選ぶヤツはほとんど居ないんだけど、それでもトヨタは「クルマを楽しんでください」ってことでMTを設定した。そんな部分も含めて、クルマが好きな人間がつくったクルマだってことが伝わる。
エンジンも、これまでのトヨタの実用車向けユニットとは明らかに違う。驚くほどトルクフル、かつスポーツユニットのように回して気持ちがイイ。3気筒特有の振動をネガとして感じさせないところも上手い。