10年前に出会ったR32との劇的な運命
マスタークラフツマン認証のメカニックであるフィリップさんでなければ、ドイツでのこの行動が困難を極めることは想像に難くない。
「確かに輸入は大変だった。しかもすごいストーリーがあるんだよ。このGT-Rは岩手県のオークションで競り落としたんだ、今からちょうど10年前の1月だった。その後、輸出の手続きを経て、船が出港したのがなんと3月10日。東日本大震災の前日に、このGT–Rは日本を出たんだよ!」
もしフィリップさんが落札していなければこのGT-Rは今は存在していない可能性もあった。
約3カ月後の6月14日、船はブレーマーハーフェン(北海に面するドイツ北部の港)に到着。ちなみに入手時はNISMOのオイルポンプやウォーターポンプが交換されていた程度のノーマルに近い車両だったそう。その後フィリップさんはグループAを偲ばせるようなカーボンパーツを多用し、クラシックなホワイトのボディの美しさを引き立たせたルックスへと進化させた。
「とにかくこのクルマの放つ機能美が好きだね。時間が経つごとに、美しさをボディから教わる気がするよ。約10年、レアパーツを探しまくってきたけれど、この美しさを壊すようなカスタムはしたくないね」
ポルシェ職人の手によりフルレストア
そんなフィリップさんも3年前、じつは売却を考えた瞬間があったという。
結局、オールドポルシェのレストアで有名なショップに持ち込みフルレストアを敢行。ウインドウやモールなどすべて取り外し、日産純正色で再塗装。エンブレムを含め、外装パーツはすべて新品へと交換した。さらにボディカラーに合わせて、18×10JというレアなサイズのNISMO LMGT1を新調したそうだ。
ちなみにドイツに渡ったGT-Rは、たいていの場合「ポルシェ職人」と呼ばれるポルシェをイジるメカニックの手で整備やレストアを行うことが多いとのこと。
インテリアは極力ストックを維持しつつも、90年代のブリッドBRIXシートやHKS製のグローブボックスメーター移設パネルをセットするなど、彼のこだわりを見せる仕様へさらに進化。歳月をかけたレアパーツ探しの集大成となる。
なお、昨年にはACCUAIRのマネジメントを組み込んで、エアサスによる足まわりを完成。ハイトセンサーがベストな車高を維持してくれるので、目的地や段差を気にすることなく、アンダー部の保護に役立っているそう。
「ほぼ思い通りの仕様にメイクできたこのGT-Rを見ると、自分の夢を叶えたのだと痛感するよ! GT-Rを介した出会い、そこで知り合った仲間が完成に導いてくれたんだ。血中ガソリン濃度の高い友達に感謝だね」