日本と海外で思惑の異なる「エコカーとEV」
欧米では本当の意味での環境政策として、車種の大小を問わず燃費に関わる二酸化炭素(CO2)排出量の限度を企業単位で策定し、あるいは強制的ともいえる強硬手段で電気自動車(EV)への移行を促している。それによって一時的に庶民の足の入手が困難になる事態を生み出した。
しかしここにきて、国民のクルマづくりを基盤とするフォルクスワーゲンは、車種に応じた電極材料の使い分けによるリチウムイオンバッテリーの原価低減策を打ち出した。米国のテスラも順次廉価な普及版のEVを導入するに至り、それが事業を支えている。
対する日本では日本自動車工業会会長が「電動化とはEV化を指すわけではない」と異論をはさみ、全国区550万人の自動車関連従業者の雇用を脅かされないといった趣旨の発言を行っている。ところがここにきて日本で設計開発され中国で生産する軽商用EVを佐川急便が導入すると発表した。自工会の長の認識の錯誤が、自らの製造業を脅かしはじめたのだ。
日本と欧米と、どちらが本当の「持続可能」社会の創出であり、市民や国民のための自動車政策だろうか。公共交通機関を安価に便利に利用できる、首都に安住する公務員が政策を考える日本と、クルマで移動することが誰にとっても一般的な欧米の政府が考える国民のための政策との違いが、明らかである。
日本のクルマ利用者は江戸時代から続く「お上に任せる」という認識から脱却し、自ら声をあげる姿勢が求められているのではないか。それでなければ、税制は変わらない。