結局のところ、いわゆる「13年ルール」は何のため?
毎年5月は自動車税と軽自動車税の納期。それらは共に地方税で、各自治体や市町村の財源となり、かつ一般税扱いなので、クルマに関連しない公共事業に利用できる財源でもある。したがって自治体の重要な財源になる。
制度を管理するのは国土交通省だ。よってエコカー減税や、初度登録から13年の車歴を積んだクルマへの重課は、国土交通省が定めている。遡ると自動車税や軽自動車税への重課がはじまったのは、2002年の「グリーン化税制」から。排出ガスの浄化性能や、燃費のよい新車の積極的な導入を促す施策として施行された。
だが税額を下げた分、どこかで補填しなければ税収が落ちてしまう。そのためガソリンエンジン車は登録から13年を過ぎたクルマ、ディーゼル車は11年を過ぎたクルマそれぞれに対して増税となる重課とした。
国交省担当者に矛盾を指摘したところ……
しかし当時販売されていた新車と13年を経過したガソリン車とで排出ガス性能等に大きな差がない場合もあり、そこを私が指摘すると、国土交通省の担当者は言葉を詰まらせた。以後、国土交通省の審議会等には呼ばれなくなった。
燃費性能については車両重量別に目標値が設定されているため、中型や大型で車両重量の重いクルマについては、小型車に比べ燃費性能がよくなくても適合車種とされた。そこで燃費性能の足りない新車はあえて装備を追加して重くし、より重い車両重量の枠での減税に適合させるといった新車販売も行われた。
つまり、これらは新車販売を促す自動車業界のための税制であり、また政府も環境対応の政策を実行しているとの見せかけの施策であり、本当の意味で環境を改善しようという意思は薄かったといえる。
その後のエコカー減税においては、13年を経過したクルマを下取りしたあと廃車することを条件とするなど、スクラップごみを増やすことを前提とした施策でもあった。今日、海洋プラスチックやマイクロプラスチックの問題が拡大するなか財源の均衡を保ちながら新車販売を促し、一方でごみを増やす政策を続けてきたのが日本の環境政策であったといえる。
これにより、車歴の古いクルマは15%増(当初は10%)の税負担を迫られることになる。これは永くものを使い続ける尊さを継承してきた日本人の「もったいない」という精神に反する行為であるとともに、過去20年間、人々の所得が増えない現状において、高齢者はもちろん若い世代の人々においてもクルマを所有することの負担を増やし、クルマ離れの気持ちをもたらし、公共交通機関の限られる地域によっては移動手段を脅かす事態を招いているのである。
日本と海外で思惑の異なる「エコカーとEV」
欧米では本当の意味での環境政策として、車種の大小を問わず燃費に関わる二酸化炭素(CO2)排出量の限度を企業単位で策定し、あるいは強制的ともいえる強硬手段で電気自動車(EV)への移行を促している。それによって一時的に庶民の足の入手が困難になる事態を生み出した。
しかしここにきて、国民のクルマづくりを基盤とするフォルクスワーゲンは、車種に応じた電極材料の使い分けによるリチウムイオンバッテリーの原価低減策を打ち出した。米国のテスラも順次廉価な普及版のEVを導入するに至り、それが事業を支えている。
対する日本では日本自動車工業会会長が「電動化とはEV化を指すわけではない」と異論をはさみ、全国区550万人の自動車関連従業者の雇用を脅かされないといった趣旨の発言を行っている。ところがここにきて日本で設計開発され中国で生産する軽商用EVを佐川急便が導入すると発表した。自工会の長の認識の錯誤が、自らの製造業を脅かしはじめたのだ。
日本と欧米と、どちらが本当の「持続可能」社会の創出であり、市民や国民のための自動車政策だろうか。公共交通機関を安価に便利に利用できる、首都に安住する公務員が政策を考える日本と、クルマで移動することが誰にとっても一般的な欧米の政府が考える国民のための政策との違いが、明らかである。
日本のクルマ利用者は江戸時代から続く「お上に任せる」という認識から脱却し、自ら声をあげる姿勢が求められているのではないか。それでなければ、税制は変わらない。