テストカーとして実在するグループA車両
これだけでも十分だが、レースには参戦していないものの、ある意味で「本物」と言ってもいい2台のカルソニックスカイラインも現在まで存在していることをお伝えしたい。
まず1台はグループAのテストカーだ。3台製作されたと噂されているモノの1台で、初期モデルと言われている。トランクを見ると、燃料給油口が開発初期に採用されたリヤフェンダー後端左右に設けられていた痕がある。ボンネットピンの位置も生産仕様とは異なる。
また、レーシングカーでありつつ、エンジンや室内含めて市販車向けのプロト部品が数多く装着されているのも特徴だ。開発終了後には展示のため全国行脚していた個体なのである。
すべて本物を使って復刻した動態保存車
そして、現在最も見るチャンスが多いと思われる「カルソニックスカイライン」が日産の座間記念庫に保管されている車両だ。
これは2002年に星野一義氏の引退に際し、復刻したものである。ならばなぜこの車両が「本物」と言われるのか。それはグループAに使われた本物のパーツによって製作されたからである。
劣化の激しかったマグネシウムのアップライトも新規で作られており、常日頃からメンテナンスが施されて動態保存されているので、今でも十分に走行可能。2020年はコロナ禍の影響で中止となったが、毎年富士スピードウェイで開催される「ニスモフェスティバル」などで勇姿を見せているのはこの座間記念庫の車両だ。
奇跡の3ショットが実現した2017年
この「本物」と呼ばれるカルソニックスカイライン3台が集結したのは2017年9月6日のことだ。日産車の歴史が詰まる「日産座間記念庫」にて撮影は行われている。恐らくこれが最初で最後の集合写真である。1台は日産が保管している車両だが、2台は個人所有だ。よくぞここまで残してくれたという感謝しかない。
マグネシウムで作られていた各パーツの劣化が激しく、他の現存するグループA車両も当時と同様の仕様へと完璧に戻すレストアが難しいと言われている。走らせることも細心の注意を払う状態ではあるが、ただこの世に存在しているだけで喜ばしい。
この先「グループA」を越えるような、五感を刺激する、心揺さぶるレースが現れるとは思えない。「伝説」を未来まで継承する存在として、この3台はそれぞれの場所で、大切に余生を送ってほしい。そしてたまにはわれわれの目の前に現れてほしいと心から願うのである。