限定車でありながらフトコロにも優しい1台
今年の3月12日に2022年3月を以って生産が終了することがアナウンスされたホンダのマイクロスポーツカーであるS660。販売終了がアナウンスされたことで購入を迷っていたユーザーたちが殺到したのか、発表から3週間足らずの3月30日には生産予定分全てが完売したという驚異のスピードだったことは記憶に新しい。 そんなS660の有終の美を飾る最後の特別仕様車としてリリースされた「モデューロX バージョンZ」は、生産終了が発表された後に注文された約4000台のうち、半数以上となる2000台以上の注文を集めたと言われている。 この「バージョンZ」という名前は、アルファベットの最後の文字である「Z」を冠したことで、最後の特別仕様車であることを示しているのは明白であるが、じつはS660にはアルファベットの最初の文字である「A」を冠したモデルも存在していたことをご存知だろうか。それこそが、2016年10月にホンダのスペシャリストとしても知られる無限からリリースされた「S660 MUGEN RA」である。
足まわりの変更でリニアで軽快なハンドリングを実現
無限が誇るレーシングスピリットを表現する「R」と、「コンプリートカーの基本」を意味する“A”を組み合わせたこのモデルは、S660が秘めるレーシングスピリットを楽しむ第一歩として作り出されたモデルだった。 そのため、エンジン本体には手を加えず、ミッドシップらしいシャープなハンドリングを楽しめるようにとマイナス25mmの調整幅を持つビルシュタイン製の車高調整式サスペンションを採用。
さらにデザインを含めた基本設計を無限が担当し、BBS社が製造した切削鍛造タイプのアルミホイールを採用し、純正ホイールに対し4本合計でマイナス5.8kgの軽量化を実現したことで、優れた回頭性やコーナリング速度、そしてリニアで軽快なハンドリングを実現していたのである。
また、オープンエアモータリングも楽しめるS660ということで、高い排気効率と心地よいスポーツサウンドを両立させたステンレス製の専用スポーツサイレンサー(マフラー)も装着されていた。