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スバリスト阿鼻叫喚? 短命に終わった「隠れた名機」FA20ターボ

短命に終わったがEJ20ターボの後継スポーツユニットとして活躍

BRZ/86に搭載のFA20とはまったく別物の「FA20DIT」

 スバルオーナーに限らず、そのポテンシャルと味わい深いフィーリングで名実ともに名機と呼ばれるEJ20エンジン。その後継ともいうべき、新世代水平対向エンジンのスポーツユニットとして登場したのがFA20 DITエンジンだ。

 FA20エンジンは2012年3月に発売された初代BRZと、同年4月発売のトヨタ86に初搭載されたNAユニットだが、2012年5月に登場する5代目レガシィの後期型登場と共にデビューしたFA20 DITとはクランクシャフトやボアストローク、一部のヘッドユニットのパーツが同一という程度で、まったく別物のエンジンとなっていた。

直噴ターボのDITは5代目レガシィのほか初代レヴォーグ/WRX S4にも搭載された

 BRZ/86に搭載されるFA20はトヨタの直噴システムであるD-4Sを採用し、直噴とポート噴射の切り替えが可能であるのに対し、FA20DITは「DIT=ダイレクトインジェクションターボ」の名の通り、筒内噴射にツインスクロールターボを組み合わせている点が大きく異なる。 また、吸気レイアウトもNAのFA20はフロントバンパーからエアクリーナー、インテークマニホールドと一直線に配置されているのに対し、FA20DITは従来のスバル車と同じく、運転席側からバルクヘッドに向かいUターンさせてインテークマニホールドへとつながるレイアウトを採用している点も異なる部分だ。

 登場時はレガシィB4/ツーリングワゴンに300ps/5600rpm、400N・m/2000〜4800rpmというハイパフォーマンスなスペックで登場したが、のちに先代フォレスターのターボモデル「XT」に最高出力280ps/5700rpm 、最大トルク350N・m/2000〜5600rpmというスポーツSUVにマッチする専用の特性に変更して搭載。続いて初代レヴォーグ/WRX S4にも採用され、タイミングチェーンガイドをはじめとした細部の改良が施された。

低速域から強大トルクと低燃費を両立する新世代ユニットとして登場

 従来のスポーツユニットであるEJ20ターボが比較的高回転型であったのに対し、FA20DITは低回転から強大なトルクを発生することで、燃費性能も大幅に向上させている。新世代ボクサーとして環境性能を向上させるため、各部のフリクションロスを徹底的に低減。実際にFA20 DITを搭載するレヴォーグを愛車に持つ筆者だが、街乗り燃費で10km/Lを切ることは稀で、高速道路では17km/L台をマークしたことも。 昨今のエコカーと比べてしまうと凡庸な数値ではあるが、300psのフルタイムAWDで車両重量が1500kgを超えるツーリングワゴンとしてはかなり優秀であると感じる。ランニングコストの面でもタイミングベルトを廃し、タイミングチェーンとしたことで耐久性も向上。メンテナンスにかかるコストも低減しているのも距離がかさむオーナーにはうれしいポイントだ。もちろんチェーン式であるが故にエンジンオイル量がEJ20ターボに比べ1L以上多く入るのが悩みの種ではあるのだが……。

大容量リニアトロニックCVTとの組み合わせでスポーティな走りも実現!

 パワーフィーリングに関してはEJ20のような味わい深い印象ではないものの、低速から湧き上がるトルクにより、比較的低回転でも背中をけ飛ばされるような猛烈な加速が味わえる。また、ロングツーリングの多いオーナーにはアイサイト任せでドライブすることで、巡行領域でリニアトロニックCVTによる最適な回転域を適切に使うことで燃料消費が抑えられるほか、ゆったり走らせることもできる。 残念ながら国内仕様ではFA20DITとMTの組み合わせを楽しむことはできないが、専用の大容量リニアトロニックCVTとの相性も抜群で、SIドライブをもっともアグレッシブなS#モードに切り替えれば、通常6速となるマニュアルモードが8速のクロスレシオになり、Dレンジのままでもステップ変速による気持ちの良い加速感が得られるのも魅力だった。

「FA20DIT」を継承するFA24ターボが次期型WRXに搭載か?

 残念ながら日本では、WRX S4の生産終了にともない登場からわずか9年足らずの短命に終わってしまったFA20DIT(編集部注:アメリカなど海外の一部地域ではWRXが継続販売中)。そのパフォーマンスは海外専売車の大型SUV「アセント」に搭載される水平対向4気筒2.4L直噴ターボエンジンのFA24型に受け継がれている。 先日発表となった次期型BRZ/86にもFA24の搭載がアナウンスされたことからも、次期型WRXにはこのアセントに搭載されているFA24ターボをベースにしたハイパフォーマンスエンジンが採用される可能性が高い。排気量をアップしさらなるパフォーマンスを発揮してくれるであろう2.4L版にも、FA20DIT以上に期待が高まる。

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