サマータイヤに戻すなら併せて「点検」してみよう
もう皆さんスタッドレスタイヤからサマータイヤに交換しましたよね。タイヤを装着するとき、サマータイヤのチェックってしました? してないまでも、改めて装着前のサマータイヤを見ると、「あれ? こんなに摩耗していたっけ?」とか、「タイヤの両サイドが減っているなあ」とか、昨年末まで不安なく履いていたサマータイヤがじつは思ったより傷んでいた、なんて感じた人も少なくないのではないでしょうか。不思議なことにタイヤを外すときにはあまり気にならないのですが、装着するときになるとどういうわけか気になるものです。
コンディションのチェックポイントとは?
チェックポイントは3つ。①摩耗の程度、②摩耗の様子、③ひび割れです。
装着前のサマータイヤを見て、案外摩耗しているのかなと違和感を覚えたのは、自分の知っているタイヤの形と、これから装着しようとするタイヤの形に違いがあることを、直感的に感じ取っているからなんです。新品のタイヤは、溝くっきりしていて、エッジが立っていて、カチッとした形をしています。カタログで見るようなタイヤの形なわけです。
摩耗したタイヤに違和感を覚えるのは、摩耗が均一に進んでいないからなんです。ブロックのエッジの角が取れて丸まっていたり、両サイドのショルダーブロックがけが摩耗が進んで、真ん中の溝がクッキリしていたり、と、つまりはタイヤが摩耗して変形してしまっているんです。これが顕著に表れてくると違和感を覚えるわけです。
なので、まずは①摩耗の程度のチェックをします。②とも関連するのですが、タイヤの両サイドと中央の残り溝をチェックしてみましょう。できればデプスゲージという残溝を測るゲージを使うとやりやすいのですが、なければ10円玉をゲージにして測ってでもOKです。10円玉は外周から10の数字の頂上部分までが約5㎜。コイン反対側の平等院鳳凰堂の屋根の先端までが約8㎜ですので、タイヤの溝に当てれば摩耗の状態がわかります。あくまでも目安ですが、タイヤ全体の摩耗具合を把握していきましょう。
②の摩耗の様子とは何かというと、タイヤは均一に摩耗はしないのです。タイヤの中央、両サイドの摩耗(残溝)の違いや、ブロック橋がめくれ上がるように摩耗していたり、ブロックの角が取れで丸くなっていたりと、不均一に摩耗するんです。
「肩落ち摩耗」「ヒール・アンド・トー摩耗」とは何か
とくに注意したいのが前輪タイヤ外側のショルダーブロックの摩耗です。ショルダー部なので肩落ち摩耗なんて読んでいます。空気圧が少なかったり、重心の高いクルマはこの部分の摩耗が大きく起こりやすいのです。ショルダー部の摩耗が激しくなるとクルマは曲がり出しが鈍くなり、結果的にハンドルを切る量が多くなってさらに摩耗が進んでしまいます。
またショルダー部の摩耗が始まると、単純にブロックの山が低くなるだけではなく、ブロックの細溝がめくれ上がるように摩耗したり、ブロック端がめくれ上がるように摩耗したり(ヒール・アンド・トー摩耗)します。これが起こるとノイズが大きくなります。警部な場合は前後輪を入れ替えることで対処することができます。
③のひび割れは初めブロックの付け根にできることが多いようです。これがサイドウオールにできていたら要交換です。
これはゴムの劣化によるもので、保管の仕方にもよりますが早ければ4~5年で現れます。
タイヤの形としてインプットされている画像と、実際のタイヤの形に差異ができてくると、違和感を覚えるんです。つまり違和感を覚えるくらいタイヤの形が変形しているということなので、タイヤを見て「あれ?」と思ったら、よく観察して必要があれば交換することをお勧めします。
新品タイヤへ交換する場合どんな銘柄がオススメか?
では、どんなタイヤを選んだらいいのでしょうか。基本は、そのまま純正タイヤであったものの新品に交換するか、同格のタイヤへの交換がお勧めです。もちろんグレードアップも推奨します。一見するとどれも黒くて丸いタイヤですが、想像するよりずっと大きな違いがあるのです。とくにプレミアム系のタイヤは、ブランドごとにキャラクター付けされていて、ライトチューンといってもいいくらいの変化も期待できます。
「転がり抵抗」「ウエット性能」も考慮したい
タイヤを交換して案外効果が実感できるのがエコタイヤです。JATMA(日本タイヤ協会)が行っているタイヤラベリングで転がり抵抗A以上、できればAA以上のタイヤを選ぶと、明らかに走り出しが軽くスムースになります。転がり抵抗が少ないタイヤは転がり抵抗少ないということは、転がり抵抗が音や熱に変わりにくいということなので、じつは案外静かだし滑らかな乗り心地が得られたりします。
梅雨の雨や夏の局地的な豪雨、夕立などを考えるとウエット性能も重視したい性能のひとつです。例に挙げたJATMAのタイヤラベリングは転がり抵抗だけではなく、ウエットグリップも同時に表示しています。ウエットグリップは出来ればbかaをお勧めしたいところです。
ただし、これはあくまでもグリップの応力なので、これと同時に排水性の良さも重要になります。ポイントは溝の太さと溝の量。溝は例えるなら道路の側溝みたいなものなので、浅いとすぐにオーバーフローになり、ハイドロプレーニングを起こしてしまいます。コンフォート系のタイヤは溝が細めなものが多いので、突出した高速排水性は期待できませんが、溝が細いぶん深くしていたりするものもあります。
乗り心地に関わる「速度記号」とは?
もうひとつ。乗り心地の目安になるものがあります。それは速度記号なんです。タイヤの側面に「215/45R18 93W」といった具合にタイヤサイズが書かれていますがこの中の最後のローマ字「W」が速度記号になり、そのタイヤが保証する最高速度になります。ちなみに H=210km/h、V=240㎞/h、W=270㎞/h、Y=300㎞/h、(Y)=300㎞/h以上。速度レンジが高いタイヤのほうが高級でよさそうに思えますが、タイヤは高速で回転すると縦方向に膨張するんです。速度レンジの高いタイヤ程膨張せず整った形を保持できるように、きつくベルトと呼ばれる部材で締める必要が出てくるわけです。
つまり高速向けタイヤほど乗り心地が硬くなる傾向があるんです。例えば例に挙げた215/45R18 93Wというタイヤの場合、同じサイズでも速度レンジYにすると乗り味はカチッとした傾向になります。もっとも速度レンジが乗り心地に影響するのはYや(Y)のタイヤです。
タイヤとクルマのマッチングは多種多様なので、なかなか具体例をあげて説明するのは難しいのですが、とにかくタイヤを替えるとクルマの乗り味が想像する以上に変わります。