個性が際立っていたメーカー純正ボディカラー
車体のデザインと同じかそれ以上に、個性があり好みも分かれるボディ色。今も昔もオーソドックスなカラーが主流だが、時おり誰もが目を引かれる奇抜な色や、メーカーの強い意志がこもった色も登場する。そんなコダワリのカラーをまとう名車を探してみよう。
貫禄あるからこそきらめく派手な「ピンク」クラウン
まずは記憶に強く残っている人も多いであろう、2013年に発売されたピンクのクラウンから。
型式としては210系と呼ばれるクラウンに特別仕様車として設定され、合計で約650台の受注があったと発表されている。街で遭遇する確率がかなり低いであろうことから、見れば幸運を招くなんて都市伝説がささやかれたほど。
ちなみに正式名称は『リボーンピンク』でカラー名は『モモタロウ』であり、カラーコーディネイトはテリー伊藤さんが担当したそうだ。
なお210系クラウンは後にクラウン誕生60周年を記念した、空色エディションと若草エディションという特別仕様車も出ている。オーナーの年齢層が高めなクルマだけあって、派手なボディ色が与えた刺激は大きかった。
古来より高貴な艶やかな「むらさき」GT-R
続いては日本を代表する高性能スポーツ、スカイラインGT-Rに与えられたボディ色、R33とR34の『ミッドナイトパープル系』だ。あえて『系』としたのは途中で改良が加えられているからだ。
R33では単なるメタリックの『ミッドナイトパープル』だったのが、R34では見る角度によって色が変化する『ミッドナイトパープルII』に。さらに『ミッドナイトパープルIII』へと進化を遂げた。
余談だがミッドナイトパープル系はスカイラインGT-Rだけの色ではなく、R33と同じカラーは台数こそ少ないが180SXにも使われていたり、2013年にはジュークに新色『ミッドナイトパープルIV』が登場したことも追記したい。
実質的な後継モデルであるR35の2014年モデルでは、赤系の『ゴールドフレークレッドパール』をイメージカラーに設定。ベースとなる赤も当然ながら単なるソリッドではないが、ポイントは散りばめられた細かいガラスフレークだったりする。なんと24金ゴールドでコーティングされており、GT-Rに相応しい鮮やかさと深さを併せ持っていた。このボディカラーは時間の経過によって細かい傷や塗装の劣化を軽減および修復する、日産が独自に生み出した技術『スクラッチシールド』にも対応しているそうだ。
ホンダ色といえばF1優勝の「白」
ホンダでは『タイプR』シリーズに共通する、専用色『チャンピオンシップホワイト』も忘れてはいけない。
1992年のNSX・タイプRを皮切りに1995年にはDC2型インテグラ・タイプRに追加、そして1997年にはEK9型シビック・タイプRとラインナップを増やしていった。いずれの車種も他グレードに設定された白とは名称から異なっており、ルーツはホンダがF1で初優勝したときのマシンからとのこと。
いずれにもチャンピオンシップホワイト以外の色はあったが、現中古車として出まわっている個体を見る限り、この色がイチバン人気だったことは想像に難くない。以前はタイプRが存在しなかったEG6型シビックなどで、ボディをチャンピオンシップホワイトに全塗装したうえ、ステッカーやトレードマークの赤いレカロシートやチタン製シフトノブを流用し、擬似『タイプR』に仕上げたクルマも全国各地で目撃されていたほどの人気である。
なおタイプRが設定されていない現行型のNSXでは、ホンダのお膝元である鈴鹿サーキットのコーナー名に由来した、純白の『130Rホワイト』が設定されている点にも注目。
マツダの魂が宿る「赤」
最近では車種こそ限定されていないものの、マツダの赤も誇りとコダワリの結晶だろう。
高級感と独特の雰囲気で大人気となったカラーは一般に『ソウルレッド』と呼ばれており、実際には『ソウルレッド・プレミアム・メタリック』と『ソウルレッド・クリスタル・メタリック』の2種類がある。時系列でいえば先に登場したのが『プレミアム』で、そこから派生したのが『クリスタル』と考えていい。
塗装色そのものの話だから『名車』という括りからは外れるかもしれないが、ソウルレッドに使われている数々の最先端技術や塗装工程の複雑さ、パッと見じゃ違いが分かりにくい2色をあえて併用させていることは、十分すぎるほどのコダワリといって差し支えない。