ドライバー優先のダイレクトな走りも披露する「GLA45S」
では、これを凌ぐGLA45Sとはいったいどんなモンスターなのだろうか? 超絶パフォーマンスを実現するあまり、恐ろしく扱いにくいモデルになっていたらイヤだなあと思いながら試乗を開始したところ、そんな不安を吹き飛ばす完成度の高いハンドリングに完全に打ちのめされた。
先に断っておくと、ワインディングロードを駆け抜ける際の絶対的なペースはGLA35とほぼ変わらない。しかも、サスペンションが極端に締め上げられている訳ではなく、基本的にはGLA35と同じように路面を滑らかにトレースしていくのだが、その際の足まわりの動きがさらにスムースで、質感の高さを満喫できるのだ。
それとともに印象的だったのが、GLA35では数回感じたボトミングが完全に起こらなかったこと。この辺はサスペンション設定の妙味もさることながら、足まわりを中心とするボディ剛性が一段と引き上げられていることを予感させた。 エンジンのキャラクターも、こうした足まわりとよくマッチしていた。低中速域はあくまでもドライバビリティ優先の設定で扱い易い。
期待どおりのパワーとレスポンスを発揮するのだが、GLA35より500rpm高い7000rpmに設定されたレッドゾーンが近づいてくると、吹き上がりは一段と鋭さが増し、回転フィールもよりシャープになって刺激的なクライマックスを迎えるのだ。
しかも、AMGダイナミクス・セレクトをレースモードに切り替えると、それまでの安定しきっていたコーナリングフォームが一転、スロットル操作や路面の状況に連動してステアリング特性が微妙に変化する様子を如実に伝えるようになった。
おそらく、それまでコーナリングを影で支えていたスタビリティコントロールやトルクベクタリングの効果が弱まり、ドライバー自身がダイレクトにクルマをコントロールするモードに切り替わったのだろう。腕に自信のあるドライバーにとっては、じつに操り甲斐のある設定といえる。
高性能と快適性を両立するAMGの哲学をしっかり継承
繰り返しになるが、ワインディングロードの走りを楽しむだけならGLA35で十分以上だ。一方、GLA45Sはいたずらにパフォーマンスを高めて操りにくくするのではなく、ドライバーに対する間口を広くとったまま、クルマの質感を高めることでGLA35との差別化を図ったように思える。ただし、レースモードを選べばドライバーの腕が試されるAMGらしいキャラクターも残されている。
いずれにせよ、公道におけるドライバビリティや快適性が向上した新しいAMGの方向性には大賛成。これまで以上に多くのファンから支持されることは間違いないだろう。