3ナンバー車の大衆化で、ワイド&ローなスタイリッシュセダンが続々登場
今さらだけれど、バブル経済期は自動車業界にとっていろいろな面で大きな変革期であった。潤沢な資金があったので、クルマの開発もイケイケドンドン。「多少失敗したって何とかなる」的な風潮で、新機構、新技術が幾多も誕生したことは皆さんご存じのとおり。そうした技術面もさることながら、1989年に自動車税の規定からボディサイズの制約がなくなったことで、デザインの自由度が増したこともバブル期のトピック。
また、今と違って衝突安全の基準も緩やかであったことから、ボディの3ナンバー化によりボンネットもショルダーラインも薄い(薄く見える)スタイリッシュなクルマが急増。とくにセダンは定番の威風堂々なデザインから脱却を狙った、ワイド&ローなスタイルを持つモデルが続々デビューした。そこでバブル期が生んだ今見てもカッコいいNEWフォーマルな5台を紹介!
【三菱初代ディアマンテ】当時のトレンドをてんこ盛りした3ナンバーサルーン人気の火付け役
1990年に登場した初代ディアマンテ(F10/F20型)は、1989年の自動車税改定の恩恵をいち早く察知して誕生したFFベースのミディアムサルーンだ。エンジンは税制の変更で2L以上4Lまでの自動車税の額が細分化。その中で今後販売が伸びるだろうと予測された2.5Lと3L(2Lもあり)に軸を置いたラインアップとなっていた。
ボディは4740mm×1775mmと全車3ナンバーのワイドボディを採用するとともに、AピラーとCピラーを寝かし、流行のピラードハードトップのサイドウインドウを配したことで伸びやかなフォルムを実現。さらに三菱らしい逆スラントのフロントデザインは既存のセダンユーザーも刺激した。
ややタイトで絞り込まれたコクピット感あるインテリア、ギャランで実績のあるフルタイム4WDや4WSといったメカニズム、最新の電子制御サスペンションなども採用され、先進性とスポーツ性を打ち出すなど、当時のトレンド要素を上手に盛り込んだことでヒットした。
【日産初代シーマ】「シーマ現象」と呼ばれるほど売れまくった高性能VIPセダン
タレントの伊藤かずえさんが長年乗り続けた愛車を日産自動車/オーテック・ジャパンがレストアすることで再び注目を集めている初代シーマ(FPY31型)。
1984年ごろから盛り上がり始めたハイソカーブームとバブル期に繋がる好景気の勢いもあって、ユーザーの高級指向の高まりを受け、Y31セドリック/グロリアのシャーシに3ナンバーボディと3Lエンジンを組み合わせた本格的なプレステージサルーンとして1988年に登場。前後の薄く長いオーバーハングと柔らかな曲面がミックスされたデザインはジャガーを彷彿させた。
最大の特徴はそのパフォーマンスで、トップモデルに搭載されるVG30DETはセダンとしては異例といえる255psを発揮! とくに上級モデルに採用された柔らかなエアサスペンションとの組み合わせでは、アクセルを踏むとリヤが大きく沈み込み、豪快に加速。その姿にアッパーミドル層が憧れ、1989年の自動車税改定以降、爆発的なセールスを記録した。
【トヨタ初代アリスト】スポーツマインドが凝縮された日伊合作の本格アスリート系セダン
上述したようにバブル期にブランニューで登場したプレステージクラスのセダンは従来の押し出し感が強いエクステリアと落ち着きのある豪華なインテリアとは異なる高級車の新しい形を模索していた。1991年に登場した初代アリスト(JZS14♯型)もそうした1台で、欧州パフォーマンスセダンに負けないスポーツ性を持たせたアスリート系セダンだった。
欧州風味のシンプルかつクリーンな佇まいと新幹線のような流線形スタイルをミックスした精悍かつ躍動感のあるスタイルはイタリアの「イタルデザイン」が担当。コクピットはセルシオのような高級感溢れるものだが、センターコンソールを運転席側に傾けるなどコクピット感を演出。視認性の高いオプティトロンメーター、機能性に優れた操作系など細部にスポーツマインドが溢れていた。
エンジンは3L直6ターボの2JZ-GTEと3L直6自然吸気の2JZ-GE、4LV8自然吸気の1UZ-FE型(国内は4WDのみ)の3タイプ。3Lターボは280ps/44kg-mのスペックで、日産のRB26DETTエンジンを上回り、国内最強であった。