「車いす用スロープ」:歩行困難な方にベスト
高齢者の中には、歩行が困難で普段から車いすに乗っている人もいる。また、自宅や近所など普段は歩行ができても、出先で長時間歩くことに不安がある人も多い。そういった高齢者がいる家庭では、車いすをそのままクルマに乗せられるスロープタイプが便利だ。
ミニバンやワンボックスカーなどに設定が多いこのタイプは、テールゲートを開けて車載スロープを引き出すことで、車体後部から介助者と一緒に乗降することができる。車内では、専用の車いす固定器具が用意されているため、走行中に車いすが動くことはない。
ただし、こういったタイプでは、車いすを固定するスペースが必要なため、3列目や2列目の助手席側シートが使えないようなタイプが多い。例えば、7人乗りミニバンでは、車いす搭載時は5人乗車となる。そのため大人数を乗せることが多く、高齢者も多少の歩行ができる場合は、前述の電動回転シートタイプのほうがいい。シートを低い位置まで下ろし、車いすからシートに移動してもらい、車いすは折りたたんで荷室に乗せてしまえば、ミドルサイズのミニバンであれば、7~8人が乗車することができる。
ちなみに、トヨタのノア/ヴォクシー、日産のセレナなどは、スロープを出す際に車体後部の車高が下がる装備も採用されている。これは、車高を下げることで、スロープの角度を緩やかにするためだ。介助者が車いすを押しやすくなり、車いすに乗っている人も角度が急な場合に比べ安心感が増すといった効果を生む。
「運転補助装置」:自らハンドルを握る人に
足が不自由で普段から車いすで生活している高齢者が、自らクルマを運転するといったケースもある。これは、若いころからクルマの運転が好きといった場合もあるが、地方など公共交通機関があまり発達していない地域にひとり暮らしをしている場合などもある。買い物や病院への通院など、生活の足としてクルマが必要なケースだ。
そういった人には、手でアクセルやブレーキを操作できる運転補助装置を装着したモデルもある。例えば、ホンダではフィット、トヨタではプリウス、マツダはロードスターに設定されている。
こういった装置は、もともとは障がい者向けなのだが、前述の通り、地方在住でクルマが生活に必要な高齢者でも、使っているケースがある。
もちろん、高齢者の場合は、例えば視力や認知機能の衰えなどの問題もあるため、誰でも使えるわけではないだろう。本来は、在住地域で送迎サービスなどが充実していればそちらを利用する手もあるが、財政が苦しいなどでそういったサービスが望めない自治体もある。その辺りは高齢化社会である日本における、今後の大きな課題のひとつであるといえるだろう。