後ろ向き装着期間の基準を生後12カ月頃から15カ月に延長
次に、後ろ向き装着をする期間が変わったことも朗報です。「R44/04」では体重9kg(およそ生後12カ月頃)から前向きに装着することができるとしていたのに対して、「R129」は最低でも生後15カ月未満までは後ろ向き装着をしなければならない、という規定に変わりました。
しかも、もし生後15カ月を過ぎても、身長76cm未満の場合は前向き使用は不可。ただし、製品によって後ろ向きで使用できる期間は異なるという注釈が入っています。15カ月(1歳3カ月)といえども、まだ身長は80〜90cmという子供がほとんど。慌てて前向きにするのではなく、体型的に余裕があるうちは後ろ向きのままにすることを推奨したいのですが、この新基準で後ろ向き装着の期間が延長されたことで、より多くの方が、赤ちゃんはなるべく背中の広い面で衝撃を分散することができる、後ろ向き装着をさせてあげることについての理解が深まることを願っています。
横からの衝突を考慮した側突試験の義務化でより安全に
続いては、チャイルドシートのトップメーカーはすでに実践していることですが、製品を開発する際に実施される「衝突試験」の内容が変わり、「R44/04」では前方・後方からの衝突試験のみだったところ、「R129」では側面(ドア側)からの衝突試験も義務化されました。
また衝突試験の際に、人間の体にどんな負荷がかかるかを検証するために使う「ダミー人形」も変わりました。従来より計測センサーが飛躍的に増えた新生児用ダミー人形となり、前後・側面の衝突時に赤ちゃんの体にどんなダメージが加わるのかを、より精密に検証できるようになっています。今後、この結果を踏まえた製品作りが蓄積されていくことで、将来のチャイルドシートがより安全なものに進化していくのは間違いないでしょう。
「R129」適合モデルは現状ではISOFIX対応モデルに限定される
さて、このように子育て世代にとって朗報となった新安全基準「R129」ですが、ユーザーとしては注意したいポイントもあります。ひとつ目は「R129」は従来の「R44/04」に取って代わるものではなく、並行して存在し続けるという点です。つまり「R129」の基準に合致していないチャイルドシートは販売されなくなるということではなく、「R44/04」基準の製品も継続して販売可能なのです。
ただ日本では、今後新たに「R44/04」基準での認可は行わない方針のようです。よって、従来の基準での新製品は今後登場しないと考えていいでしょう。 となると、もうひとつユーザーが注意したいポイントは「R129」の認可が下りる条件として、装着方法が「ISOFIX」に限られるということです。
ISOFIX(アイソフィックス)とは、車両側に設置されたアンカー金具に、チャイルドシート側に設置されたコネクター金具を差し込むことで、誰でも簡単に確実に装着できるという、国際規格の装着方法です。日本でも2012年7月以降に発売された新型車からISOFIX適合が義務化されており、それ以前に発売された車種でもメーカーの意向で適合している車種もあります。
マイカーが2012年7月以降に新しく発売された車種なら問題ありませんが、それ以前の場合は、まずシートの座面と背もたれの境目を見て、ISOFIXと表示のあるアンカー金具が設置されているかどうか、確認しましょう。もし見つからない場合は、従来通りシートベルトで固定するタイプのチャイルドシートを使用することになります。「R44/04」基準の製品もしばらくは継続して販売されると思いますが、購入してからマイカーに装着できなかった、とならないように注意したいところです。