FD3Sで大きな転換とハイパワーを実現
FC3Sは7年間もの長きに渡って生産され続け、後継モデルのFD3Sにバトンタッチしたのが1991年。ここでエンジンに数々の改良が加えられ、型式も「13B-REW」へと改められる。もっとも重要なのはタービンがシングルからツインになったこと。ロータリーの泣きどころであるトルクと燃費の改善に貢献した。
低回転ではひとつのタービン(プライマリー)だけを使用し、高回転になるともうひとつ(セカンダリー)でも過給を行う、シーケンシャルツインターボという仕組みだった。FD3Sの販売は1991~2003年とFC3Sを上回る長さで、その間にも度重なる改良や仕様変更が実施されている。
前期モデル(1~2型)ですら255ps/30kg-mを誇り、パワーもトルクもFC3Sを大きく凌駕。中期モデルといわれる4型ではブースト圧や吸気系の小変更、またECUの制御が8ビットから16ビットに進化したことで、MT車のみではあるが265psと10ps上乗せされた。そして13B-REWの完成型といえるのが、後期モデル(5~6型)でついに280ps/32kg-mの大台に到達。ブースト圧だけにとどまらずタービン本体、吸排気系を変更し当時の自主規制の上限であるパワーを実現したのだ。
独特の手法でチューニング業界でも活躍
RX-7(ロータリー)は排気量アップが不可能(3ローターの20Bをスワップすれば別だが)という弱点はあれど、構造がシンプルで分解や組み立てしやすいことから、チューニングカーの世界でも13Bは登場すると同時に脚光を浴びた。ピストンやコンロッドが存在しないため、主なチューニングの手法はポート加工となる。有名なのは純正でも存在するローター側面の吸気ポートを拡大する「サイドポート」や、純正のサイドポートを埋めてローターの外周に吸気ポートを設ける「ペリフェラルポート」だ。ローターの頂点に使う「アペックスシール」を強化品に交換するのもお約束。
後継モデルRX-8も時代に合わせ進化
ターボを組み合わせた13Bの歴史はFD3Sで終焉を迎えるが、実質的な後継車のRX-8は燃費や環境に配慮しつつ、NAながらカタログ値で250ps/22kg-mという高出力を達成する。
新世代のロータリーエンジンは『13B-MSP』という名が与えられ、2013年にRX-8が生産を終えるまで第一線で活躍し続けた。ターボの13Bだけでも歴史は1985~2003年と20年弱。FD3SとRX-8の間に若干の空白はあれど、NAを含めれば1973~2012年の長期に渡る。スカイラインGT-RのRB26DETTと並び、日本自動車史に残る名機といえるだろう。